研究課題/領域番号 |
26400199
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
守本 晃 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (50239688)
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研究分担者 |
芦野 隆一 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (80249490)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ウェーブレット / 信号源分離 / N 分木離散ウェーブレット変換 / 分数べきヒルベルト変換 / 時間スケール解析 / 双直交ウェーブレット / 画像分離 / スパース表現 |
研究実績の概要 |
複数のセンサーで捉えた複数の観測信号から,信号源ごとの元信号を推定する逆問題をブラインド信号源分離と呼ぶ.情報の発信者とその内容である元信号を分離することは,実環境下で働く自立型ロボットには必要不可欠な基本技術である.信号源分離に対する一般的なアプローチは独立成分分析であるが,我々はウェーブレット解析を用いた時間(空間)スケール解析に興味があり,この問題に対する解法を考案し,その数学的背景を調べてきた. 本研究では次の3点を明らかにする.1.N 分木離散ウェーブレット変換・逆変換のアルゴリズムおよびプログラムを完成させる.2.音声・画像の分離問題に適した N 分木離散ウェーブレット変換を探し,それを用いた信号源分離の解法を提案する.3.複数種類の N 分木離散ウェーブレット変換を用いて,フレームに対するスパース表現を応用し,観測信号の数が信号源の数より少ない場合の信号源分離問題を考察する. 最初に1.に対する研究実績は以下のとおりである.N 分木離散ウェーブレット変換を行うためには,双直交ウェーブレット関数の分数べきヒルベルト変換に対応する性質の良い双直交スケーリング関数が必要である.これらの関係を調べ,離散ウェーブレット変換に必要なフィルター係数の対応を決定した.CDF 双直交ウェーブレットに対して,48種類のフィルター係数を計算した.Coiflet 正規直交ウェーブレットに対して,17種類のフィルター係数を用意した.これらのフィルター係数を用いた N 分木離散ウェーブレット変換・逆変換のプログラムを1次元・2次元信号に対して周期境界条件で完成させた.次に,2.に対しては,N 分木離散ウェーブレット変換で得られる詳細(あるレベルのバンドパス成分に相当する)は十分長いフィルターの場合にはシフト不変に近くなるので,平行移動を含んだ混合画像の分離問題の解法を研究した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究期間内に明らかにすることは次の3点である.1.Meyer 以外のウェーブレット関数を用いた N 分木離散ウェーブレット変換・逆変換のアルゴリズムおよびプログラムを完成させる.必要ならば,前処理・後処理を設計する.ノイズ除去・特徴抽出・電子透かしなどに応用し性能を他の方法と比較する.2.音声信号・画像の分離問題に適した N 分木離散ウェーブレット変換(正規直交または双直交ウェーブレット関数)を探し,それを用いて混合モデルの各パラメータを推定する.3.解析に適したウェーブレット関数が複数種類見つかれば,フレームに対するスパース表現を応用し,観測信号の数が信号源の数より少ない場合の信号源分離問題に手を付ける. 目的1.に対しては,Daubechies, Coiflet, Meyer 等の正規直交ウェーブレットと,CDF 双直交ウェーブレットに対して,N 分木離散ウェーブレット変換・逆変換のプログラムを1次元・2次元信号に対して周期境界条件で完成させた.工夫の余地はあるが,前処理は補間で後処理はダウンサンプリングで設計した.N 分木離散ウェーブレット変換で得られる詳細(あるレベルのバンドパス成分に相当する)は十分長いフィルターの場合にはシフト不変に近くなるので,特徴抽出には有用であると思われる. 目的2.に対しては,CDF13 と CDF17 から得られたほぼシフト不変性を持つ詳細を利用して平行移動を含んだ混合画像を分離する問題の解法を研究した.得られた研究結果は,2015年7月の ICWAPR および 8月の ISAAC の国際会議で発表する予定である. 以上の研究成果から,初年度としては,おおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究推進方策は,以下の通りである.目的1.に対しては,定常離散ウェーブレット変換を用いた音声への電子透かしを埋め込む研究に対して,N 分木離散ウェーブレット変換に変更して効果を探ってみる.また N 分木離散ウェーブレット変換で使用できる双直交ウェーブレット関数を増やしたい.目的2.に対しては,N 分木離散ウェーブレット変換の詳細を利用した平行移動を含んだ混合画像を分離する問題についての研究結果は,2015年7月の ICWAPR および 8月の ISAAC の国際会議で発表する予定である.また音声信号の分離問題に着手する.目的3.に対しては,N 分木離散ウェーブレット変換のフレームやフーリエ級数のフレームを構築し,信号源分離問題に応用してみる. 最終年度には,今年度の研究成果を元にして,以下の研究推進方策を考えている.目的3.にあげたスパース表現による信号源分離を使って,観測信号の数が信号源の数より少ない場合の信号源分離問題を考察する予定である.目的1.の N 分木離散ウェーブレット変換を信号源分離以外の用途に使う研究も引き続き行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
11月半ばから3月初旬まで,私事で出張が不可能な状態になり,研究集会への参加ができなくなったためと,次年度早々に以下の使用が見込まれたため次年度使用額が生じた.2015年の4月にラスベガスで開催される 12th International Conference on Information Technology: New Generations に参加する出張費,数値計算ソフト matlab 更新料,雑誌 Information の購読料.
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次年度使用額の使用計画 |
5月9日時点で,4月のラスベガス出張費 24万1千円,matlab 更新料 6万8千円,雑誌 Information の購読料 3万6千円を使用し,次年度使用額をほぼ使用した.
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