研究課題
本研究の目的は、細胞接着現象を解明するための数理的基盤を構築することである。そのために、実験、モデリング、解析を包括的に行う。平成27年度の研究実績は以下の通りである。分担者・富樫は、平成26年度に引き続き、2種類の細胞が特徴的なモザイク様のパターンに並ぶマウスの嗅上皮をモデルに、カドヘリン、ネクチンの2種類の細胞接着分子が協調的に細胞選別に働く分子メカニズムの検討を行った。本研究課題では、細胞密度に関するモデルの提出と、その解析を念頭に置いているが、富樫と代表者・村川は、現象の本質の理解に向けて、細胞単位の挙動についても、実験と数理の双方からの意見交換、情報交換を行った。村川と分担者・若狭は共同で、本研究課題の成果として提案した数理モデルの解析を進めている。1種細胞種の細胞集団の挙動について、その弱解の一意存在性を示した。また、この問題には、自由境界と呼ばれる有限の速さで動く境界が現れることを示し、その自由境界の振る舞いが、ある常微分方程式の解により表されることを明らかにした。2種細胞種の細胞集団の問題は、解が不連続になるなど、解析的に取り扱いが困難である。この問題に対する解析に向けての基礎研究を行っい、解についてのいくつかの評価を得た。本研究課題におけるこれまでの一連の研究成果が認められ、村川は2015年度応用数学研究奨励賞を受賞した。細胞接着現象は生命科学分野において非常に重要な現象であり、本研究の応用は幅広い。村川は実際に、国内外の生命科学者と議論を行い、実際の生命現象の解明に向けた共同研究を開始した。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画通りに順調に研究が進んでいるため。
研究は当初の研究計画通りに順調に進んでおり、本年度も引き続き当初の計画通りに進めていく予定である。なお、実際の生命現象の解明に向けて生命科学者と共同研究を開始しており、そうした応用面に向けても研究を広げていく。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 6件、 招待講演 9件)
J. Cell Biol.
巻: 212 ページ: 561-575
DOI: 10.1083/jcb.201509020
Discrete Contin. Dyn. Syst. S
巻: - ページ: -
J. Theor. Biol.
巻: 372 ページ: 1-12
doi:10.1016/j.jtbi.2015.03.002
in Proceedings for the 4th MSJ-SI Conference on Nonlinear Dynamics in Partial Differential Equations, S. Kawashima, S. Ei, M. Kimura and T. Mizumachi, eds., Adv. Stud. Pure Math
巻: 64 ページ: 243-251
European Journal of Applied Mathematics
巻: 26 ページ: 325-353
doi:10.1017/S0956792515000042
Journal of Differential Equations
巻: 258 ページ: 3960-4006
doi:10.1016/j.jde.01.023