研究課題/領域番号 |
26400205
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
村川 秀樹 九州大学, 数理学研究院, 助教 (40432116)
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研究分担者 |
若狭 徹 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (20454069)
富樫 英 神戸大学, 医学研究科, 助教 (90415240)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 応用数学 / 数値解析学 / 数理生物学 / 細胞・組織 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、細胞接着現象を解明するための数理的基盤を構築することであった。そのために、実験、モデリング、解析を包括的に行った。 分担者・富樫は、カドヘリン、ネクチンの2種類の細胞接着分子が協調的に細胞選別に働く分子メカニズムの検討を行った。また、細胞接着現象のモデリングに必要な情報である、細胞の拡散係数や細胞分裂の割合、環境収容力、細胞接着強度などについて定量的な値の計測・調査を行った。代表者・村川は、モデリングのための文献調査を行い、既存のモデルの問題点の抽出、精査、考察を行った。富樫による実験結果を観察し、文献調査を基にした考察と数多くの数値計算による知見を総合して、細胞接着現象を記述する数理モデルを提案した。富樫の実験によって得られた定量的な値を数理モデルに代入し、数値計算を行ったところ、提案したモデルは定量的にも現象を再現できるものであることが分かった。 村川と分担者・若狭は共同で、提案した数理モデルの解析を進めた。1種細胞種の細胞集団の挙動について、その弱解の一意存在性を示した。また、この問題には、自由境界と呼ばれる有限の速さで動く境界が現れることを示し、その自由境界の振る舞いが、ある常微分方程式の解により表されることを明らかにした。2種細胞種の細胞集団の問題は、解が不連続になるなど、解析的に取り扱いが困難である。この問題に対する解析に向けての基礎研究を行っい、解についてのいくつかの評価を得た。 村川は、実際の生命現象の解明に向けて、本研究課題における成果の応用を行った。大脳皮質形成過程におけるある化学物質の細胞接着への影響について、数理モデルを用いてある性質を予測し、共同研究者等による実験によってその予測が正しいことが検証された。その結果は、これまでに全く知られていなかったものであり、本研究の重要性を示すものである。更に、複数の応用研究に着手している。
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