研究実績の概要 |
本研究課題は共形ガリレイ群と呼ばれるリー群の表現論を発展させ, それを数学の他の分野や理論物理へ応用することを目的としている. 共形ガリレイ群は非相対論的な時空における共形変換の集合であり, 無限個の異なるリー群の総称である. 量子力学の基礎方程式であるシュレーディンガー方程式は共形ガリレイ群のひとつを対称性として持つなど, 非相対論系における基本的な群である. 共形ガリレイ群では空間の次元は3である必要はなく, 任意の次元を考えることができる. また, 空間の次元を固定しても相異なる共形ガリレイ群は無限個存在し, それらは非負整数, または正の整数でパラメトライズされる. また, リー超群や無限次元リー群への拡張などさまざまなバラエティがある. 本年度は, 無限次元版の共形ガリレイ群のリー代数の表現論, および, 共形ガリレイ群を「拡張されたリー超群」に格上げしたものと微分方程式の関係について大きな進展を得ることができた. 研究成果は次のとおりである. 1. 空間1次元の場合の共形ガリレイ超代数(代数の次元は無限大)について, 中心拡大の分類, 余随伴表現と呼ばれる表現の構築, 演算子積展開の導出などを行い, この代数の応用に使われるであろう基本的な道具を開発した. 2. 前年までにLevy-Leblond方程式というスピン1/2の粒子を記述する方程式(空間3次元)が共形ガリレイ群を「拡張されたリー超群」に格上げしたもので与えられることを示した. 同様な方程式を任意の次元の空間で構成する方法を与えた. また, Levy-Leblon方程式は自由粒子に対する方程式であるが, ポテンシャルがある場合の同方程式の構成方法も与えることができた. そして, 空間1, 2次元の場合もLevy-Leblond方程式の対称性が同様の「拡張されたリー超群」であることを示した.
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今後の研究の推進方策 |
基本的には当初の計画どおりであるが, 次の点を重要な変更として加える. 当初の計画ではリー群とリー超群のみを研究の対象としていたが, それに拡張されたリー超群も加える. つまり, 共形ガリレイ群に対して研究課題に挙げていた項目と同じことを共形ガリレイ群に付随する拡張されたリー超群に対しても行う. 特に, 拡張されたリー超群の表現論の研究はあまりないようであり, 物理的意義もまだ十分には解明されていないので, それらを明らかにしたい.
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