研究課題/領域番号 |
26400210
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研究機関 | 城西大学 |
研究代表者 |
安田 英典 城西大学, 理学部, 教授 (30406368)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 新型インフルエンザ / シミュレーション / 体内感染症モデル |
研究実績の概要 |
インフルエンザA/H5N1に感染すると白血球減少と肺の著しい損傷が同時に現れる。しかしながら、白血球の感染細胞への攻撃よって肺の細胞損傷が生じるので、一見すると白血球減少と肺の損傷は両立しない。白血球減少と肺細胞損傷が同時に起こるメカニズムは季節性インフルエンザのモデルでは説明できず、事実、季節性インフルエンザ感染時に主要な役割を担うリンパ球による細胞損傷モデルによるシミュレーションでは白血球の減少は再現できない。一方、マウスの実験によって自然免疫の一種である好中球がA/H5N1ウィルス感染時には減少することが判明した。本研究では、A/H5N1ウィルスによる好中球の刺激を考慮して、肺の上皮細胞、A/H5N1ウィルスと好中球をモデル化した常微分方程式系を構成し、系統的なパラメータランによって好中球が寄与するパラメータが大きいときに白血球の大幅な減少と細胞損傷が同時に生じることを示した。さらに、随伴方程式によるモデルパラメータの感度解析によって、細胞損傷に関しては好中球の寄与が著しく大きいことを示した。一見すると両立しない白血球減少と肺細胞の損傷が、好中球の寄与を取り入れたモデルのシミュレーションによって再現できたのである。また、併せてインフルエンザA/HN1の治療方法の効果を検討するためのシミュレーションも実施した。 本年度、臨床結果と比べても妥当な範囲でA/HN1の特異な病理を再現でき、シミュレーションによってA/H5N1の特異な病理が好中球の関与するメカニズムによって引き起こされることを示した。なお、好中球のパラメータが通常の値のときは、白血球が増加する季節性インフルエンザの病理も再現できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インフルエンザA/H5N1に特有な病理を再現するモデルを構築した。そのモデルはA/H5N1に特有なパラメータを通常の値に設定すると、季節性インフルエンザの病理も再現するものである。さらに、A/H5N1治療方法の効果を検討するためのシミュレーションを実施した。
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今後の研究の推進方策 |
シミュレーションの高速化のためにモデルの改良をおこない、シミュレーション結果を流行伝搬モデルへの寄与させる方法について検討する。併せて、流行伝搬モデルとの連成シミュレーションを実行するための計算機環境の研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はワークショップを開催したが、関係者の都合で当初予定したものより小規模なものとなった。また、下記の計算環境の検討に際して、新型PCの発表も検討に含めることにしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
開発した体内感染症モデルを流行伝搬モデルに結びつけるために、小規模な並列計算システムの構築を計画している。
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