本課題は,延長により本年度が最終年度となったが,時間遅れをもつ感染症の数理モデルに関する研究として重要な2本の英論文(研究発表欄)が掲載された。これらはいずれも時間遅れを考慮した数理モデルに関する議論ではあるが,方向性が大きく異なる。1つ目は,時間遅れとフィードバック項を含むSIS感染症モデルの平衡点の大域漸近安定性について,アルバイトの大学院生の積極的な協力と共著者のアドバイスにより,連続型モデルでの解析と差分型モデルでの安定性の解明まで期限内に行うことができた。代表者が参加できなかった国際会議等では共著者が本成果を含む内容を発表している。2つ目は,代表的なSIR感染症モデルの時間遅れをもつ場合に対し,差分方程式を経由して導出した超離散方程式の解の安定性を議論することで,連続・離散・超離散モデルにおける相関性を新たに見つめ直したものである。これらの成果は後継の研究課題において,さらなる拡張や応用に役立つものと考える。
|