研究課題/領域番号 |
26400214
|
研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
小川 知之 明治大学, 総合数理学部, 専任教授 (80211811)
|
研究分担者 |
末松 信彦 明治大学, 総合数理学部, 専任講師 (80542274)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 反応拡散系 / パターン制御 / 光制御BZ反応 |
研究実績の概要 |
反応拡散系に現れるパターンを制御する方法を理論的・実験的に開発するのが本研究課題の目標である。Turing不安定化を引き起こすような2変数系では分岐直後に、六角形的に対称なパターンが現れるか、それともストライプ的な少し対称性の低いパターンが現れるかは非線形項の対称性で決まる。そこで対称性が何であろうと、フィードバック制御を行い所望のパターンを安定化することを考える。activator-inhibitor系がactivatorを出力としてsemi-passivityという性質を持つことを明らかにし、例えばスペクトル一致のフィードバックを印可して六角パターンや矩形パターンの安定化が可能なことを示した。この結果は、『反応拡散系における不安定定在波の選択的安定化』2016年度計測自動制御学会論文賞武田賞を受賞した。またこの理論的な結果を光感受性触媒を用いた化学反応系で対応する実験制御系を構築することを目指し光制御BZ反応系を対象とする。ここで、この系では光制御によるフィードバックがactivatorではなくinhibitorに働くので、semi-passivityは成立しないが、数理モデルのシミュレーションから定在波パターンが得られた。これは予想していなかったことだが、分岐構造を調べて見たところ、一様振動解からの倍周期分岐として得られているらしいということがシミュレーションから示唆された。実際、同様の結合振動子系を大域的に抑制結合することにより倍周期分岐から交互的な振動が現れることもわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
反応拡散系に現れるパターンを制御する方法を理論的・実験的に開発するという目標に対し、理論的な部分はsemi-passivityを用いてパターンの制御の枠組みができた。一方、これに対応する化学反応系での実験制御系の構築を最終目標にしている。光制御BZ反応系を対象として、基本的な実験設定は細かな問題がいくつかあるもののほぼ完成した。光制御BZ反応系の数理モデルのシミュレーションでは、semi-passivityとは別の原理で、一様振動からの倍周期分岐がえられて、単純な設定下での分岐構造を明らかにして、口頭発表を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
反応拡散系に現れるパターンの制御を、解析・実験双方から行うことが目標であるが、理論的な結果を実験系で再現するのにあと半年ぐらいの期間が必要と判断される。実験に用いる光制御BZ反応系での光刺激が当初予測していたように活性因子に作用するのでなく抑制因子に作用することがわかったが、分岐追跡シミュレーションで得られた倍周期分岐からの定在波を実験的に再現する。 その際、ビデオカメラからの入力信号取り込みにおける技術的な問題を解決して、実験制御システムが稼働させる。そのために、博士後期課程の学生に実験補助をお願いして、実験を繰り返す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験の方向性が当初の計画から変わりパラメータ設定なども新たに行ったことと、ビデオカメラからの入力信号取り込みにおける技術的な問題があったために、当該年度中に行う予定の実験の一部を次年度に繰り越した。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度の早い段階で実験制御システムの詳細設定を確定する。そのために博士後期課程の学生に実験補助をお願いする。また、9月に行われる応用数理学会や台湾で10月に開かれる国際会議などに出席して、研究発表を行う予定である。
|