反応拡散系に現れるパターンを制御する方法を理論的・実験的に開発するのが本研究課題の目標である。activator-inhibitor系がactivatorを出力としてsemi-passivityという性質を持つことを明らかにし、例えばスペクトル一致のフィードバックを印可して六角パターンや矩形パターンを選択的に安定化可能なことが本研究課題を通じてわかってきたことであるが、この理論的な結果を光感受性触媒を用いた化学反応系で対応する実験制御系を構築することを目指してきた。そこで光制御BZ反応系を採用し、数理モデルのシミュレーションから定在波パターンらしきものが得られたの。さらに、問題を単純化し、光制御BZ反応系で作った結合振動子系を大域的に抑制結合することにより倍周期分岐から交互的な振動が普遍的に現れるのかを調べた。その結果、振動子の非対称性の程度により、分岐した交互振動解の枝が反位相振動解の枝にリコネクションしたりすることもあり、交互振動と反位相解の明確な境界がないかもしれないということがわかった。実験系で対応する振動を再現することもできた。先に述べたように交互振動と反位相解の区別はシミュレーションでも難しいので実験でも難しいが、むしろ分岐構造から交互振動と反位相解の違いを見分けるべきだというのは、一つのメッセージである。 本研究を通して、反応拡散系に現れるパターンを制御する方法として、対応する化学反応系での実験制御系の構築を目指し、光制御BZ反応系を対象として、結合振動子系では大域結合メカニズムを加えることで構築できた。一方、空間パターンへのフィードバックは交互振動的なパターンが得られるものの、多種多様で未解明の部分が多い。これは、次の研究課題につなげていきたい。
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