研究課題
本研究の目的は、138億年の宇宙史において、密度環境によって銀河形成の偏りがとくに大きいと考えられる宇宙年齢10億年~30億年の初期の時代に注目し、すばる望遠鏡 Hyper-Suprime Cam 等を用いて得られる共動座標で数100 Mpc のスケールという広視野の観測データに基づいて、初期の銀河形成過程の解明を目指すものである。平成27年度は広視野多色撮像データに基づいて、(1)SSA22 高密度領域における HSC データなどによる多色銀河解析、(2)SSA22領域の多色銀河サンプルの分光観測による銀河間ガス吸収の観測研究、(3)SSA22領域の非常に大きな輝線等価幅を持つ天体の多色スペクトル解析、(4)すばる望遠鏡広視野データ、スピッツァー赤外線宇宙望遠鏡などによる広視野での銀河多色スペクトルの解析、等の研究を進めた。このうち、広視野での銀河多色解析からは、赤方偏移z=5を超える星形成を終えた静的な銀河の数密度を求める研究の他、赤方偏移 z=4での紫外線スペクトルの傾きについて詳細に調べる研究をすすめ、z=4でも本来最も活動性が高く光度が大きな星形成銀河が最も強い吸収を受けていること、吸収を補正した星形成率は 数百~数千太陽質量/年に及ぶこと、および、低光度側で吸収の影響が無視できるようになる遷移光度の発見などの成果を得た。また、SSA22 原始銀河団領域の研究では、大質量銀河形成につながる密な銀河群の同定とその性質の研究に加え、広視野多色データに基づいて z=3.1 大規模構造およびその背後の天体を同定し、銀河間ガスの吸収分布を求めるための分光観測を遂行した。特に大きな輝線等価幅を示す銀河については、多色スペクトル解析から、100万年以下の非常に若い星形成年齢の電離モデルにより基線等価幅を説明する結果を得た。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度は、原始銀河団領域について、すばる望遠鏡、ALMA 望遠鏡の観測に基づいた研究結果をとりまとめ出版するとともに、すばる望遠鏡HSC装置によって取得された同領域広視野多色画像の解析、原始銀河団領域における非常に大きな水素ライマンα輝線等価幅天体の統計的および個別天体の研究、SSA22 領域でのケック望遠鏡による銀河間ガス分布の観測の実施と解析、すばる望遠鏡広視野カメラデータを中心とする多色画像による紫外線スペクトル性質の解析、すばる望遠鏡広視野データおよびケック望遠鏡分光データによる高赤方偏移低光度銀河核の探査研究などをすすめた。
原始銀河団領域 SSA22 では、広視野多色サンプルの分光観測による銀河間ガス分布の観測、大きな等価幅のライマンα輝線銀河観測をさらにすすめる。また、すばる望遠鏡 HSC データを用いたより広い一般広視野領域での紫外線スペクトル研究の実施、変光解析を用いた活動銀河核の同定と銀河・ブラックホール共進化の研究を進める。
2016年1月に所属が東北大学大学院理学研究科から宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究所に変更となり、科研費の移管に要した期間を含めて研究計画を変更した。
平成28年度において、データ解析のためのストレージ(ポータブルハードディスク)、国内研究集会における研究発表に使用する。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
The Astrophysical Journal
巻: 822 ページ: 46-58
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