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2014 年度 実施状況報告書

次世代多波長観測と理論シミュレーションの連携で解明する銀河団の非熱的現象

研究課題

研究課題/領域番号 26400218
研究機関山形大学

研究代表者

滝沢 元和  山形大学, 理学部, 准教授 (70323160)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2018-03-31
キーワード銀河団 / X線天文学 / 電波天文学 / 衝撃波 / 粒子加速 / 重力レンズ
研究実績の概要

銀河団1RXS J0603.3+4214の北側にあるtoothbrush電波レリック周辺領域のすざく衛星による観測データの解析を行った。電波レリック外縁では、電波観測からは非熱的電子のエネルギースペクトルからマッハ数~4程度の衝撃波の存在が予想されていたが、我々が温度分布から求めたところそのマッハ数は1.7程度となり、統計誤差、系統誤差の両者を考慮しても優位に異なることを示した。この結果は単純な衝撃波粒子加速理論に疑問を投げかけるものであり大変興味深い。また、電波レリックからの逆コンプトン散乱による非熱的X線の上限をもとめ、シンクロトロン電波との比較から磁場強度の下限値が数マイクロガウスとなることを示した。この結果は、磁場のエネルギー密度が、熱的ガスのエネルギー密度の数パーセント以上になることをしめし、レリック周辺の力学的進化に磁場が無視できない影響を及ぼす可能性を示している。以上の結果は Itahana et al. として投稿準備中である。
銀河団Abell1367中にある電波銀河NGC3862の多波長偏波観測データの解析からローテーションメジャーマップを作成した。また、簡単な磁場構造モデルを仮定することで磁場強度を求めた。なお、この天体でこの種の情報が得られたことは初めてであることを強調しておきたい。以上の結果は Takahashi et al. として投稿準備中である。
4つの力学的に緩和した銀河団(Hydra A, A478, A1689, A1835)の弱重力レンズとX線のジョイント解析をおこない、ヴィリアル半径付近で静水圧平衡の近似が破れている可能性が高いこと、また降着衝撃波モデルの場合よりも低いエントロピーの原因が密度超過ではなくて温度低下によるものであることを示した。また、弱重力レンズで求めた質量とヴィリアル半径でスケールすることで密度、温度、圧力およびエントロピーの普遍的なプロファイルを得た。以上の結果は Okabe et al.(2014)としてPASJ誌に掲載された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

重力レンズ、X線、低周波電波観測において、アクセスできる観測データが順調にたまっており、多波長解析を行う環境は整ってきている。所属研究室においてX線観測データ解析の環境や知見については全く問題ない状況にある。また、低周波電波観測データ解析についてはノウハウの全くないところからはじめたが、電波天文学のエキスパートの共同研究者や、活動的な大学院生の貢献もあって、学問的な成果が出せるような環境を整えつつある。
すざく衛星のキープロジェクトとして電波レリックに関するテーマが採択された。申請者は共同提案者に入っており、指導する大学院生とともに今後積極的に解析に携わっていく予定である。
一方、シミュレーションコードの改良については、マンパワーの問題もあり一時的に停滞していることは否めない。ただ、「今後の研究の推進方策」のところにもあるように、より観測的研究の比重を高めるべき状況になりつつあることから、必ずしも大きな問題ではないと考えられる。

今後の研究の推進方策

アクセス可能な興味深い観測データが増大していること、また、申請者の指導する大学院生で観測的研究を希望する人の割合が増えていることなどから、より多波長観測データ解析の側面を強くしていく方向で考えている。特に、申請者が共同提案者に入っている電波レリックに関するすざく衛星のキープロジェクトが採択されたこと、および、低周波電波で多くの観測データを抱えるグループとの共同研究が軌道に乗り始めたことは、この一年の間に本研究計画に大きな影響を与える出来事であった。

次年度使用額が生じた理由

指導する大学院生によるX線観測データ解析および低周波電波観測データ解析で予想以上に成果が出たため、学会発表のための旅費が不足する状態になった。そのため山形大学理学部内の競争的資金である挑戦的研究計画助成に応募したところ無事に採択され30万円の研究費を得ることができた。なお、この助成金額は30万円で固定ということだったため、端数として3万円強の残額が発生した。なお、この金額は当該年度直接経費110万円のおよそ2.7%にすぎないのでさほど大きな問題ではないと思われる。

次年度使用額の使用計画

次年度の当初予定直接経費90万円に対して、今回生じた次年度使用額は3.3%にすぎないので大きな研究計画の変更は必要ないと考えられるが、プリンター消耗品等の購入に充てる予定である。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (11件)

  • [雑誌論文] Discovery of a Nearby Early-Phase Major Cluster Merger CIZA J1358.9-47502015

    • 著者名/発表者名
      Yuichi Kato, Kazuhiro Nakazawa, Liyi Gu, Takuya Akahori, Motokazu Takizawa, Yutaka Fujita, and Kazuo Makishima
    • 雑誌名

      Publications of the Astronomical Society of Japan

      巻: 67 ページ: 印刷中

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Universal Profiles of the Intracluster Medium from Suzaku X-Ray and Subaru Weak Lensing Obesrvations2014

    • 著者名/発表者名
      N. Okabe, K. Umetsu, T. Tamura, Y. Fujita, M. Takizawa, Y. -Y. Zhang, K. Matsushita, T. Hamana, Y. Fukazawa, T. Futamase, M. Kawaharada, S. Miyazaki, Y. Mochizuki, K. Nakazawa, T. Ohashi, N. Ota, T. Sasaki, K. Sato, and S. I. Tam
    • 雑誌名

      Publications of the Astronomical Society of Japan

      巻: 66 ページ: 99

    • DOI

      10.1093/pasj/psu075

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 銀河団1RXS J0603.3+4214の電波レリック周辺領域での物理状態と粒子加速過程2015

    • 著者名/発表者名
      板花まどか
    • 学会等名
      日本天文学会2015年春期年会
    • 発表場所
      大阪大学豊中キャンパス(大阪府豊中市)
    • 年月日
      2015-03-18 – 2015-03-18
  • [学会発表] 電波銀河NGC3862の偏波観測による銀河団Abell1367の磁場推定2015

    • 著者名/発表者名
      高橋育美
    • 学会等名
      日本天文学会2015年春期年会
    • 発表場所
      大阪大学豊中キャンパス(大阪府豊中市)
    • 年月日
      2015-03-18 – 2015-03-18
  • [学会発表] 「すざく」衛星による銀河団 Abell 3391 と Abell 3395 の連結領域の観測2015

    • 著者名/発表者名
      菅原悠宇紀
    • 学会等名
      日本天文学会2015年春期年会
    • 発表場所
      大阪大学豊中キャンパス(大阪府豊中市)
    • 年月日
      2015-03-18 – 2015-03-18
  • [学会発表] 衝突初期の銀河団CIZA J1358.9-4750の「すざく」による追加観測~外縁部のICMの特徴~2015

    • 著者名/発表者名
      加藤佑一
    • 学会等名
      日本天文学会2015年春期年会
    • 発表場所
      大阪大学豊中キャンパス(大阪府豊中市)
    • 年月日
      2015-03-18 – 2015-03-18
  • [学会発表] X線と電波で探る銀河団電波レリックの粒子加速過程2014

    • 著者名/発表者名
      滝沢元和
    • 学会等名
      日本SKAサイエンス会議「宇宙磁場」2014
    • 発表場所
      国立天文台三鷹キャンパス(東京都三鷹市)
    • 年月日
      2014-11-13 – 2014-11-13
  • [学会発表] 銀河団Abell1367の偏波解析の結果報告2014

    • 著者名/発表者名
      高橋育美
    • 学会等名
      日本SKAサイエンス会議「宇宙磁場」2014
    • 発表場所
      国立天文台三鷹キャンパス(東京都三鷹市)
    • 年月日
      2014-11-13 – 2014-11-13
  • [学会発表] 衝突銀河団CIZA1359-48のATCA観測2014

    • 著者名/発表者名
      赤堀卓也
    • 学会等名
      日本SKAサイエンス会議「宇宙磁場」2014
    • 発表場所
      国立天文台三鷹キャンパス(東京都三鷹市)
    • 年月日
      2014-11-13 – 2014-11-13
  • [学会発表] 銀河団Abell2256のJVLA偏波観測結果2014

    • 著者名/発表者名
      小澤武揚
    • 学会等名
      日本SKAサイエンス会議「宇宙磁場」2014
    • 発表場所
      国立天文台三鷹キャンパス(東京都三鷹市)
    • 年月日
      2014-11-13 – 2014-11-13
  • [学会発表] Particle Acceleration Processes in Galaxy Cluster Radio Relics Investigated thorough X-ray and Radio Observations2014

    • 著者名/発表者名
      Motokazu Takizawa
    • 学会等名
      Cosmic Magnetic Fields: Current Knowledge and the Future Ideas
    • 発表場所
      Przegorzaly Guesthouse of the Jagiellonian University, Krakow, Poland
    • 年月日
      2014-10-23 – 2014-10-23
  • [学会発表] 電波レリックを持つ銀河団1RXS J0603.3+4214の衝撃波候補領域の解析2014

    • 著者名/発表者名
      板花まどか
    • 学会等名
      日本天文学会2014年秋季年会
    • 発表場所
      山形大学小白川キャンパス(山形県山形市)
    • 年月日
      2014-09-11 – 2014-09-11
  • [学会発表] 衝突銀河団 Abell 2256 のJVLA偏波観測結果2014

    • 著者名/発表者名
      小澤武揚
    • 学会等名
      日本天文学会2014年秋季年会
    • 発表場所
      山形大学小白川キャンパス(山形県山形市)
    • 年月日
      2014-09-11 – 2014-09-11

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公開日: 2016-05-27  

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