研究課題/領域番号 |
26400220
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
梅田 秀之 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60447357)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 超巨大星 / 超巨大ブラックホール / ダイレクトコラプスシナリオ / 一般相対論的不安定性 / 初代星 |
研究実績の概要 |
本研究では、宇宙初期において原始星へ極めて急激な質量降着がおき巨大星が作られ、それがそのまま崩壊するという、いわゆるダイレクトコラプスシナリオに従って実際に巨大なブラックホールが形成されるのかどうかを調べている。その結果は宇宙初期に存在する巨大ブラックホール形成の謎を解明する糸口になる。先行研究では宇宙初期にはそのような急激な質量降着が実際におき、またその降着時には星の半径が膨らみ低温になるため放射フィードバックが抑制され、10万太陽質量を超えるような巨大星形成が実際に可能であることが示されていた。しかしそのような星の計算は極めて不安定で困難であるためその後の計算はなされておらず、最終的な星の質量やブラックホールへの崩壊過程の計算はまだ行われていなかった。当該年度の計算により、幾つかの降着率の場合について星が崩壊を始めるまでの計算を終えることができ、その結果を幾つかの研究会で発表し、現在投稿論文を執筆中である。得られた結果の中で重要である点は、降着によりできた星の性質は平衡状態を仮定して作られた解析的な巨大星のモデルとはかなり異なっているという点である。解析モデルの恒星は十数万太陽質量になると一般相対論的に不安定になり崩壊するが、実際の結果は解析モデルに比べ等エントロピーなコアの質量が小さい。そのため、一般相対論な不安定は遅れて起き、1太陽質量/年程度以下の降着率の場合では相対論的な不安定性が起きる前に中心の水素が燃え尽きヘリウム核を形成する。このような場合には崩壊後(星全体が)爆発するようなことはほぼありえず、確かに巨大ブラックホールが形成されると言うことができる。またヘリウム核形成後も直ちに不安定にはならないため、実際に崩壊が起きる前までには全質量がかなり増加することがわかった。このような結果は恒星進化計算を行って初めて明らかになったもので新しい知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は様々な降着率の場合についての崩壊までの恒星進化計算を終わらせ論文を投稿する予定であったが、計算をしていたものの中で最も降着率が大きいものについて、境界条件の取り方をより慎重に行うと最終質量が若干増加することがわかり、再計算を行うことにした。その計算に少し時間がかかったため、現在はほぼ計算は終了しているが、未だ投稿論文を書き終えることができていない。そのためおおむね順調に進展していると自己評価することにした。
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今後の研究の推進方策 |
まずは様々な降着率の場合の恒星の進化計算を崩壊が起きるまで星の進化コードを用いて計算し、その結果をまとめて査読雑誌に論文を投稿する。その後、計算した最終段階のモデルを用いて一般相対論的な一次元流体コードを用いて崩壊の様子をより詳細に計算する。この一般相対論的コードについてはすでに昨年度までにテスト済みである。それにより、これらのモデルが実際に崩壊するか、爆発が起きる可能性があるのか明確にする。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文の出版料に使う予定であった分が、再計算のために計画が少し遅れ出版が次年度にずれ込んだためである。
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次年度使用額の使用計画 |
論文の出版料のほか、研究会発表や研究打ち合わせのための旅費、また古くなった計算機の補填などに使用する計画である。
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