研究課題/領域番号 |
26400222
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野本 憲一 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 上級科学研究員 (90110676)
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研究分担者 |
鈴木 知治 中部大学, 工学部, 准教授 (20280935)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 超新星 / 矮小銀河 / 初代星 / 金属欠乏星 / 元素合成 |
研究実績の概要 |
宇宙の初代星がどのような質量関数を持ち、どのような進化・爆発・元素合成をしたかを解明することは、現在の天文学の焦点の一つである。その重要な手がかりが、矮小銀河や銀河系ハローで観測された極端に金属量の少ない星の元素組成から得られる。最近の大規模探査によって、金属超欠乏星の平均的な組成比と比較して、鉄に対する炭素の組成比が極端に大きい星と、逆に炭素からカルシウムに至るアルファ元素の鉄に対する組成比が小さい星の存在が明らかになった。本研究では、そのような特異な組成比の多様性がどのようにして生じるかを解明し、初代星の性質や質量関数の解明に迫ることを目的とした。それと同時に、矮小銀河や極度に暗い小銀河が銀河系ハローを形成する種となったかどうかという銀河形成過程の解明に適用することを目的とした。 28年度は、矮小銀河でのみ観測されている超高輝度超新星の起源の解明に焦点をあてた。超高輝度超新星はその明るさ、光度曲線の変化の遅さから、太陽質量の100倍近い大質量星であることが示唆されている。大質量星が質量を星風によって失わずに超新星まで進化することは、矮小銀河の星の金属量が少ないことに起因していると解釈できる。従って、初代星との関連の解明が重要となる。本研究では、超高輝度超新星の明るさの起源として、星周物質との衝突という機構に着目た。そのシミュレーションを行い、10-30太陽質量に及ぶ星周物質が形成されていれば、光度曲線の特徴を再現できることを明らかにした。そのような大量の星周物質の起源として、大質量星での電子陽電子対生成発生に伴う星の脈動による質量放出が起こり得ることも示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
超高輝度超新星の明るさが、星周物質との衝突モデルによって説明できることを理論計算によって明らかにできたことにより、これまで推測による議論の多かった超高輝度超新星の起源の定量的な議論を、当初の計画以上に大きく前進させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
超高輝度超新星の光度形成の機構として、超強磁場を持つ中性子星、マグネターも有力モデルの一つである。しかしながら、その電磁エネルギーがガスの熱・運動エネルギーに有効に転換されるかどうかは未解明のままなので、その基礎過程の研究を進める。中性子星に関連した元素合成過程として、r-過程元素の合成の研究を推進する。これが、矮小銀河の化学進化の理解の鍵となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に、それまでに矮小銀河で観測された金属欠乏星の元素組成のデータの分析結果を説明しうる超新星爆発のシミュレーションと、それに基づいた矮小銀河の化学進化の大規模なシミュレーションを行ない国際会議で発表する予定であったが、新たに、r-過程元素の含有量が顕著な星の観測の予備的データを入手した。r-過程元素の起源は本研究の結論を出す上で極めて重要であるので、計画を変更し、このr-過程元素の多い星の元素組成の分析を優先的に行なうことにしたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
このr-過程元素の含有量が顕著な星の詳細な解析と、それを説明する超新星爆発のシミュレーション、それらの結果の国際会議での発表を次年度に行うこととし、次年度使用額はそのためのコンピュータの購入、旅費などの経費に充てることにしたい。
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