宇宙の初代星がどのような質量関数を持ち、どのような進化・爆発・元素合成をしたかを解明することは、現在の天文学の焦点の一つである。その重要な手がかりが、矮小銀河や銀河系ハローで観測された極端に金属量の少ない星の元素組成から得られる。最近の大規模探査によって、金属超欠乏星の平均的な組成比と比較して、いくつかの組成比が大きく異なる星の存在が明らかになった。本研究では、そのような特異な組成比の多様性がどのようにして生じるかを解明し、初代星の性質や質量関数の解明に迫ることを目的とした。それと同時に、矮小銀河や極度に暗い小銀河が銀河系ハローを形成する種となったかどうかという銀河形成過程の解明に適用することを目的とした。 29年度は、中性子星同士の合体による重力波が初めて観測され、r-過程元素の生成とその崩壊によると思われるKilonova と呼ばれる光赤外での増光が観測された。本研究では、r-過程元素の崩壊だけでなく、マグネター、星周物質との衝突による光度増加のモデルを検討し、Kilonovaに加えて、超高輝度超新星のモデルにも適用した。モデルの決定には今後の観測が必要である。全期間の研究によって、鉄に対する炭素の組成比や鉄に対する亜鉛の組成比が極端に大きい特徴を示す金属超欠乏星の元素組成の多くは、太陽の10-40 倍の質量の星が極超新星として爆発的に生成する元素の組成でよく説明できるという結果を得た。これにより、初代星の質量関数も太陽の10-40 倍の質量範囲にピークを持つという結論を得た。
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