研究課題/領域番号 |
26400224
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
竹内 拓 東京工業大学, 理工学研究科, 特任准教授 (40372651)
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研究分担者 |
奥住 聡 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (60704533)
武藤 恭之 工学院大学, 基礎・教養教育部門, 助教 (20633803)
廣瀬 重信 独立行政法人海洋研究開発機構, 数理科学・先端技術研究分野, 主任研究員 (90266924)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 理論天文学 / 惑星起源・進化 / 磁気流体力学 / 降着円盤 |
研究実績の概要 |
本研究は、原始惑星系円盤などの降着円盤において、円盤を貫く星間磁場がどのような形状になっているか、また星間磁場を種とする乱流の強さ、および円盤の降着率はどの程度になるかを理論的に解き明かすことを目的としている。 これまでの研究で、円盤の降着速度が与えられた場合の磁場形状の定常解を解析的に導出することに成功している。この解析解から、円盤を貫く磁場、特に磁束の量に対して、定性的な理解を得ることができている。この解は定常解であるので、実際の降着円盤進化においてどの程度定常解が有用性を持つかを調べる必要があった。一般に磁場が定常解に達するまでの時間は円盤の粘性進化時間に比べて短いとされているが、我々は、磁場が特に速く移流するような場合にも一般化して、磁場が準定常に達する時間が粘性進化よりも早くなる条件を洗い出して分類した。その結果、磁場の移流速度がガスの移流速度の10倍程度以上であり、磁気プラントル数が1のオーダーであれば、磁束が中心星付近に強く束ねられた準定常状態にすばやく緩和することがわかった。これらの結果から、原始惑星系円盤の密度構造の進化について、磁場の準定常解を使った見積もりが有効であることがわかった。現在、磁場の定常解をいくつかのタイプに分類して、円盤構造の進化にどのような影響を与えるかを調べている。 つづいて、円盤の降着速度が磁場の強さに依存する場合について、円盤構造と磁場構造の進化を同時に解く研究を行った。円盤降着率は磁場強度と正の相関があるという数値シミュレーション結果が複数報告されており、これを取り入れた計算を行った。円盤降着によって磁束が円盤の内側に束ねられると、そこでの質量降着率は上昇し、円盤中央部にガス密度の薄い領域ができることが、予備的な計算結果からわかってきた。今後は、より精密な計算を行って、円盤中央部に穴の開く条件などを洗い出す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、円盤構造とそれを貫く磁場構造についての1次元モデルの研究を主として行った。これまでの研究で、円盤の降着速度が与えられた場合については、磁場形状の定常解の解析的な導出と、その定常解が実際の降着円盤進化において実現されるための条件を明らかにした。その結果、磁場の移流速度がガスの移流速度の10倍程度以上であり、磁気プラントル数が1のオーダーであれば、磁束が中心星付近に強く束ねられた準定常状態にすばやく緩和するという結果が得られた。これらの結果は、円盤の磁気乱流の数値シミュレーションと組み合わせることによって、円盤進化について重要な示唆を与えると考える。 つづいて、円盤の降着速度が磁場の強さに依存する場合について、円盤構造と磁場構造の進化を同時に解く研究を行い、円盤中央部にガス密度の薄い領域の形成が予想されることがわかった。原始惑星系円盤のいくつかに中央に穴の開いたものが観測されているが、それを説明する可能性のあるものとして、今後研究を続ける。 上記の結果で重要となる、磁束の移流速度・磁気プラントル数を円盤乱流の数値シミュレーションから測る研究は、27年度以降に行うこととなった。数値計算でサーベイするパラメータースペースを、1次元モデルで十分絞った上で行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
まず、円盤構造とそれを貫く磁場構造についての1次元モデルの研究を継続し、円盤構造と磁場構造の進化を同時に解く計算を行う。これまでの予備的な計算により、円盤中央部にガス密度の薄い領域ができることが予想される。一方、円盤内にデッドゾーンと呼ばれる磁気的に不活性な領域がある時は、円盤降着率が大きい解と小さな解が共存できることもわかった。この二つの解のどちらが現実に選択されるかについては、現在のところ未解明であり、線形解析等によって解の性質を明らかにする。 われわれの予備的計算は、円盤中央部に穴が開く場合があることを示唆しており、これは観測されている穴の開いた原始惑星系円盤のいくつかを説明するかもしれない。上記の円盤構造の解の性質が明らかにした上で、中央に穴が開く条件などについて明らかにする、より精密な計算を行う。 われわれのこれまでの研究は、磁束の移流速度および磁気プラントル数が、円盤構造の進化を決定するうえで重要な量であることを明らかにした。円盤乱流の数値シミュレーションを用いて上記の量を測る研究は、1次元モデルを使って穴の開く条件などのパラメータ範囲がある程度絞られた段階で、行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、円盤降着率の磁場強度依存性を仮定して1次元長時間進化を追う計算と、上記1次元モデルに必要な円盤降着率の磁場強度依存性を、円盤乱流の3次元数値シミュレーションから求める研究の2つの部分からなる。平成26年度は3次元数値シミュレーションの実行も予定していたが、研究の進行上、1次元モデルの解の挙動を明らかにすることと、その解の長時間進化の研究を主として行う必要が生じた。そのため、3次元数値シミュレーションに必要な計算機・ソフトウェアなどの購入などを平成27年度以降に行うこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度において、3次元数値シミュレーションに必要な計算機ならびに数値シミュレーション結果の解析ソフトなどを購入する。
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