研究課題/領域番号 |
26400225
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
西 亮一 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (80252419)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 位置天文学 / 恒星系 / 星形成 / 巨大分子雲 / Gaia / JASMINE |
研究実績の概要 |
ヨーロッパ宇宙機関による位置天文観測装置Gaiaの第一段階のデータ公開が9月14日に行われ、それを用いた恒星系の構造についての研究を開始している。ただし、このデータ公開では観測期間が短いためにまだ十分なデータとはいえず、次回以降のデータ公開に強く期待している。また、日本の位置天文衛星で近く打ち上げ予定のnano-JASMINEのデータを用いた星形成領域を中心とした恒星系の研究についても検討を進めており、Gaiaによるデータと合わせることでより成果が期待できることがわかった。これらについては、12月に国立天文台で開催された国際会議Gaia-JASMINE joint meetingにおいて口頭講演として報告し、JASMINEとGaiaの協力やそれによって期待できる成果についての議論も行った。また、1月にスペインで開催されたGaiaのデータ解析とデータ公開について議論する国際会議に出席し、今後の予定や方向性についての議論に参加した。そして、公開されたGaiaデータの使用方法や解析方法について開設するweb-pageを作成し公開した。これは今後も拡充していく予定である。加えて、Gaiaの広報のための組織であるGaiaverseにも参加し、公開された記事を日本語訳して紹介する活動も行っている。 それと並行して近傍の巨大分子雲であり星形成領域として非常に重要なオリオン巨大分子雲についての研究を進めるため、国立天文台野辺山宇宙電波観測所のレガシープロジェクトの一つである星形成分野のオリオンA巨大分子雲の詳細な広域観測を行うグループに参加し、観測および解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まず、nano-JASMINEの打ち上げが遅延してそのデータが使用できないことが遅延の理由である。そしてそれをある程度代替できるGaiaも観測は進んでいるが、データ解析に手間取っており、データ公開は当初予定よりかなり遅れてきている。Gaiaの第2回目のデータ公開で公開されるデータが使用できると研究が大きく進展すると期待しているが、その公開は2017年度の後半以降となっているので、それを待つ必要がある。 そして国立天文台野辺山宇宙観測所のレガシープロジェクトについても、機器の不具合のために観測時間が大きく削られて進捗が予定より遅れている。 以上より、研究進展自体は遅れているが、観測の進捗によるデータ取得とそれを用いた研究進展は十分可能だと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
まずはGaiaの第1回のデータ公開のデータを用いた研究を進める。ただし、かなり限定的なデータであるため、第2回のデータ公開があるまでは研究も限定的にならざるをえない。また、オリオンA巨大分子雲の構造についてもこれまでにレガシープロジェクトの観測で得られたデータをもとに解析を進めるが、こちらも予定より大幅に取得データが減少しているため、今年度の秋以降の観測シーズンでの観測データが重要となる。 2017年度後半以降では、オリオンA巨大分子雲の観測データが取得できる予定であるため、構造解析の研究が大きく進展すると期待している。また、Gaiaの第1回のデータ公開では、吸収などの理由により色指数が大きくなっている星ははずされている。そして星の密度が高い領域でも不十分な公開となっている。一番決定的なのは、過去のHIPPARCOS衛星の観測時にデータのある星のみ(TGAS天体と呼ばれている)についてしか距離の情報が出されていないことであり、研究が限定的になっている。第2回目のデータ公開ではこれらの問題点が基本的にすべて改善される予定であり、計画している研究を大きく進展させることが可能になるはずである。
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次年度使用額が生じた理由 |
Nano-JASMINEの打ち上げ計画が再度延期されたことおよびGaiaのデータ公開が遅れたことにより研究が全般に遅延したため。
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次年度使用額の使用計画 |
Gaiaの第2回目のデータ公開が2017年度後半以降にあり、それによって研究が大きく進展する予定である。そこでGaiaチームとの連携のためや成果発表のために大きく研究費を使用していく必要ある。
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