オリオン領域における大局的な星形成過程について、2018年4月25日に公開されたGaia DR2のデータを解析することによって調べた。まず、HR図によって前主系列星をピックアップし、その特徴を調べると、固有運動平面において非常に狭い範囲に集中していることがわかった。このことを利用するとGaia DR2ではうまくHR図を描くことができないオリオン大星雲近傍領域においても若い星をピックアップできることを示した。そして、オリオン領域の非常に広い範囲ににわたって前主系列星は固有運動がほとんど同じであることも発見した。 続いて、空間的に分かれている前主系列星の集団ごとに、前主系列星の年齢を推定し領域ごとの星形成史を評価した。集団ごとの星形成の開始時刻の差は小さく、終了時刻の差は明確であることがわかった。その結果は、この領域で起きている可能性が議論されてきた、大質量星の活動性に起因する連鎖的星形成による大局的な星形成モデルとは相容れないものである。これらの解析は大質量星と共に形成されていると考えられる中小質量星の解析によるものであり、大質量星との関係は今後詳細な議論が必要である。 また、オリオン領域との比較のためにもさそり座周辺にある近傍の大質量星集団についても同様の解析を行った。その結果はオリオン領域と定性的には同様の結果であった。 これらの結果は、大局的な星形成過程を理解する上での新たな重要な情報であると言うことができ、今後より詳しく幅広い解析を進めていく予定である。
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