研究課題
活動銀河核フィードバックを理解する上で重要な研究対象が、相対論的ジェットをもつ「電波で明るい」活動銀河核(電波銀河)である。本年度は、近傍宇宙における電波銀河の大サンプルに対して、「すざく」および「XMM-Newton」衛星のデータを利用して、系統的なX線スペクトルの解析を進めた。その結果、超高速アウトフロー(Ultra Fast Outflow)の証拠を27%の天体から発見した。検出効率を補正すると、およそ半数の天体が超高速アウトフローを持つことを示唆する。この事実は、強いジェットのあるなしに関らず、活動銀河核の降着円盤からはしばしば強い円盤風が放出されていることを意味する。また、活動銀河核からの相対論的ジェットの機構を理解するため、ジェットが観測者の方を向いている「ブレーザー天体」のうち最もX線で明るい天体「Mrk 421」に着目し、全天X線監視装置(MAXI)のデータを用いて、その時間変動の性質を調査した。MAXIの提供する3年間にわたる光度曲線は過去最長で、これまでで最も低い周波数における変動率を決定することに成功した。その結果、約1日のタイムスケールにおいてパワースペクトルが折れ曲がりをもつこと、その低周波数側での傾きが(強いジェットを持たない)セイファート銀河のそれと似た値であることが判明した。この事実は、ジェットの活動性の長期変動が、降着円盤内縁における物理に起因して生じていると考えて矛盾しない。これらの結果は、いずれもAstrophysical Journal誌に報告した。さらに、ASTRO-Hによる活動銀河核フィードバックの研究計画を議論するため、フランスでの科学会議に参加した。また、活動銀河核の環境を理解するために重要な「活動銀河核の空間相関」に関する国際会議にも参加した。
2: おおむね順調に進展している
近傍宇宙におけるジェットをもつ活動銀河核のX線データの系統的解析は、ジェットの起源、発生機構、周囲への影響を理解する上で基本となるものである。本年度は、着実にその研究を遂行することができたと考えられる。
「すざく」の莫大なアーカイブデータを用いて、活動銀河核のX線スペクトルの統一解析をさらに進める。電波銀河だけでなく、ジェットをもたない種族にも対象を広げる。また、チャンドラによるディープサーベイを進め、より遠方宇宙においての活動銀河核フィードバック現象を理解する。
研究遂行に必要な計算機資源を別経費で確保できたため、予定していた物品費の支出が不要となったため。
複数の国際会議にて招待講演を行い、海外研究者と共同研究を進めるため、おもに海外渡航費として使用する予定である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 10件、 謝辞記載あり 5件)
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