研究課題
活動銀河核フィードバックのパワーを担う、相対論的ジェットや降着円盤風の放出には、ブラックホール質量に依らない、共通の物理機構が働いていると考えられる。特に、ブラックホールへの質量降着率が極めて高く、エディントン光度に相当する「臨界降着率」に近付いた時に、降着流と放出流がどのような振舞を示すかということは、極めて重要な基本問題である。そこで、近傍銀河に存在する「超高光度X線源」の可視スペクトルの研究を進めた。その結果、これらの多くが、銀河系内の唯一の定常ジェット天体SS 433と同じスペクトルの特徴を示すことを発見した。この事実は、超高光度X線源が大量のガスを円盤風として周囲に吹き出している「超臨界降着流」状態にあることを強く示唆するものである。さらに、銀河系内ブラックホールX線連星・白鳥座V404星のアウトバーストの可視・X 線データを解析し、降着円盤内側での熱的不定性が、従来考えられていたよりもずっと質量降着率の小さいときにも起こり得ることを指摘した。これらは結果は、それぞれNature Physics誌およびNature誌に報告した。活動銀河核フィードバックの宇宙論的進化を理解するためには、遠方宇宙における活動銀河核の無バイアス探査が欠かせない。長年来、共同研究者と協力して進めてきた「すばる」XMMニュートンディープサーベイで見つかったX線天体の多波長同定のカタログをまとめ、PASJ誌に出版した。これは今後の研究の基礎データベースとなる。さらに、これまでに行なわれてきた硬X線探査の結果のレビュー論文を執筆し、Proceedings of Japan Academy Series B誌に報告した。これらの結果を中心に、セルビアおよびイギリスで行なわれた国際会議で招待講演を行なった。
2: おおむね順調に進展している
高い質量降着率下にあるブラックホールの研究は、活動銀河核フィードバックの物理機構の理解に欠かせないものである。また、X線多波長深探査のカタログ製作は、その宇宙論的進化に研究を進める上で基礎となる。本年度は、着実にこれらの研究を遂行することができたと考えられる。
「すざく」やNuSTAR衛星の大規模データを用いて、活動銀河核のX線スペクトルの統一解析を進め、ジェットの有無による中心核構造の違いや、その光度依存性を解明する。また、ALMA望遠鏡やX線衛星を組み合わせた多波長ディープサーベイを進め、高赤方偏移での活動銀河核フィードバック現象を調査する。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 10件、 査読あり 11件、 謝辞記載あり 7件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)
Nature
巻: 529 ページ: 54-58
10.1038/nature16452
The Astrophysical Journal
巻: 803 ページ: ー
10.1088/0004-637X/803/2/57
巻: 804 ページ: ー
10.1088/0004-637X/804/2/104
Monthly Notices of the Royal Astronomical Society
巻: 449 ページ: 1845-1855
10.1093/mnras/stv344
Proceedings of the Japan Academy, Series B
巻: 91 ページ: 175-192
10.2183/pjab.91.175
Nature Physics
巻: 11 ページ: 551-553
10.1038/nphys3348
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 67 ページ: ー
10.1093/pasj/psv050
10.1093/pasj/psv057
巻: 815 ページ: ー
10.1088/0004-637X/815/1/1
The Astrophysical Journal Letters
10.1088/2041-8205/815/1/L13
巻: 454 ページ: 3622-3634
10.1093/mnras/stv2181