研究課題
活動銀河核(AGN)中の巨大ブラックホールを取り巻く「トーラス」は、降着円盤からのアウトフローによって形成されている可能性がある。したがって、トーラスの構造が中心核光度やエディントン比(ブラックホール質量で規格化した質量降着率)にどのように依存するかを調べることは、AGNフィードバックの物理を理解する上で重要である。これまでに「すざく」衛星によって観測された、吸収をうけた近傍AGN(45天体)と光度の低い近傍AGN(10天体)に対して、Swift/BATのデータも含めた広域X 線スペクトルを系統的に解析した。その結果、トーラス立体角の平均値は、中~高光度の範囲では光度と逆相関するが、低光度がわでは、光度と正相関することを発見した。また、低光度AGN のうち、エディントン比がひじょうに小さい天体ではトーラス構造がほとんど発達しておらず、AGNフィードバックを決定する鍵パラメータがエディントン比である示唆を得た。これらの結果は、ApJSおよびApJ誌に報告し、ギリシアで行なわれた国際会議の招待講演で紹介した。強力なジェットをもつ電波銀河 3C 120のChandra衛星による長時間X線観測を行ない、過去最高の精度のスペクトルを得た。その結果、3C 120が、強いAGNフィードバックを引き起こしている、晩期の合体銀河であることを突き止めた。このようなジェットによるAGN フィードバックは、銀河団中心での冷却流を阻止する有力メカニズムとして提唱されている。「ひとみ」衛星による共同研究で、中心部に電波銀河をもつペルセウス座銀河団の高温ガスを初めてマイクロカロリメータで観測し、その乱流速度が予想よりも小さいことを発見した。ジェットのエネルギーがどのように銀河団ガスに受け渡されるかの理解は今後の課題である。以上の結果は、ApJ誌およびNature誌に報告した。
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すべて 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 10件、 査読あり 12件、 謝辞記載あり 9件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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