研究課題/領域番号 |
26400229
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
嶺重 慎 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70229780)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ブラックホール / ジェット / 降着流 / 放射圧 / 逆コンプトン散乱 / 計算コード / 国際研究者交流(ドイツ) |
研究実績の概要 |
以下の2課題に専念し、計算および計算コードの開発を進めた。 1.ブラックホール成長初期の継続的超臨界降着:超臨界降着流のコンプトン過程いりの大局的2次元輻射流体シミュレーションを、従来より計算ボックスを広げ、ガス注入率を数種類変えて実行し、降着流・噴出流構造を調べた。その結果、ブラックホールへの超臨界降着流はいつでも可能であること、電磁波光度およびガス噴出率はガス流入率のほぼ1乗に、運動論的光度はそのほぼ1.5乗にそれぞれ比例して、いずれもいくらでも大きくなること、電磁波光度は見る角度に大きく依存して、特に円盤面に垂直からみると、エディントン光度の百倍程度の光度で頭打ちになることを新しく見出した。並行して、2次元ボンディ降着のシミュレーションコードの開発を行い、テスト計算に成功した。現在、エネルギー方程式の組み込みを作業している。 2.バイナリーブラックホールへの超臨界降着:ドイツ・キール大学を訪れ、同大学グループが開発した(航空業界で使われている)メッシュを境界構造に合わせて張り直すcurvilinear grid法による流体コードを使わせてもらい、バイナリーブラックホールに適用するために必要な開発とテスト計算を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は計算機コードの開発であったが、(1)の課題においては順調に動くところまで確認できた。領域を広げる点については、少し改善したが、今後の工夫が必要で次年度の課題である。(2)の課題については、コードの移植に時間がかかり初年度では無理かと予想していたが、スムーズにコードが動くところまで達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の2課題に加え、1課題を加え、必要なコード開発とテスト計算を中心に研究を進める。 1.ブラックホール成長初期の継続的超臨界降着:初年度に引き続き、計算ボックスをさらに2桁広げた超臨界降着流の輻射流体シミュレーションを実行し、周囲のガスへの輻射フィードバック効果を、ガス流入率やみかけの角度の関数として定量的に明らかにする。 2.バイナリーブラックホールへの超臨界降着:メッシュ法シミュレーションについて、ドイツ側が開発したコードに輻射過程をポストプロセスで導入し、超臨界降着流・噴出流のテスト計算を実行する。 3.クランプ状アウトフローの観測可能性:高光度降着流からのアウトフローは、X線領域で青方偏移した吸収線として観測される。鉄などの重元素よるX線吸収スペクトルの計算の準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度につき、あまり学生謝金が必要でなかったため、次年度に回した。
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次年度使用額の使用計画 |
資料整理やテスト計算に学生謝金を計上する。
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