研究課題
本研究の特色は、その場測定や室内実験など惑星科学の分野で得られた知識を天文分野にフィードバックし、天文観測データの解釈に新たな視点を提供することである。当該年度、スターダスト探査機でサンプルリターンされた星間ダストの分析結果が発表された (Westphal et al. 2014, Science 345, 786)。さらに、カッシーニ探査機における星間ダストその場分析チームに加わり、星間ダストの物質同定を行った。また、局所星間雲に関する新たな描像が提案された (Gry & Jenkins 2014, A&A 567, A58)。これらの研究で得られた知見から、星間ダストはどのような物質からなっているのかを知る有力な手がかりを得られることから、急遽、予定を変更して星間ダストの物質についての考察を行った。この変更は、当該研究の目的である「彗星・デブリ円盤ダストは変成した星間ダストか、それとも原始惑星系円盤凝縮物か、という問いに答えを見出す」上で、星間ダストの物質という基盤となる知識を得るために必要不可欠であった。局所星間雲に関する新たな描像に基づいて、星間ガスの紫外線吸収スペクトルからの元素存在量データを分析することで、星間ダストの元素組成や弱いショックにより壊れてる様子を洞察することができた。マグネシウム、ケイ素、及び鉄の元素存在度の相関から、シリケイトに鉄を含まないことや、鉄は主に金属の形で星間ダストに存在することが分かった。また、ガス/ダスト質量比は約120であり、有機物がダスト質量の40%を占めることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
当該年度の研究では、研究実施計画に記載されたものとは異なった研究を行ったが、これは、平成27年度~平成28年度にかけておそらく行っていたであろう研究の先取りに相当する。したがって、順序は違うが交付申請書に記載した「研究の目的」の達成度という観点からは、おおむね順調に進展していると考えられる。
星間ガスの紫外線吸収スペクトルから導出した局所星間雲における星間ダストの元素組成は解明したが、スターダスト探査機でサンプルリターンされた星間ダストの分析結果、カッシーニ探査機における星間ダストその場分析結果、および、星間空間起源ピックアップイオンのその場測定から得られる星間ダストの元素組成が、それぞれ矛盾なく説明できる星間ダストの物質を同定することが急務となっている。これは、太陽系内で検出された星間ダストや星間ガスが局所星間雲での組成をそのまま保持しているのかどうかを考察することで、平成27年度前半には解明されうると期待される。よって、平成27年度後半には、予定を変更前に行うはずであった平成26年度の課題に取り組むつもりである。
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すべて 2015 2014
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Monthly Notices of the Royal Astronomical Society
巻: 449 ページ: 2250-2258
10.1093/mnras/stv427
Planetary and Space Science
巻: 未定 ページ: 印刷中
10.1016/j.pss.2015.03.009
10.1016/j.pss.2015.03.017
10.1016/j.pss.2015.03.002