研究課題
本研究の特色は、その場測定や室内実験など惑星科学の分野で得られた知識を天文分野にフィードバックし、天文観測データの解釈に新たな視点を提供することである。当該年度では、中間赤外線スペクトルの計算結果と観測データとの比較を行う予定であったが、(a) スターダスト探査機でサンプルリターンされた星間ダストの星間起源に疑問が呈され(Silsbee & Draine 2016, ApJ, 818, 133; 以後SD16)、(b) デブリ円盤の中心星近傍での近赤外線超過として発見された灼熱ダスト集積の謎が深まり(Rieke et al. 2016, ApJ, 816, 50; 以後R16)、これら(a)及び(b)を喫緊の課題として検討する必要に迫られた。(a) SD16は、古典的な星間ダストモデルに基づいて星間ダストに働く太陽輻射圧を計算した結果、スターダスト探査機によってサンプルリターンされたダストと矛盾することを示したが、カッシーニ探査機搭載の質量分析計による星間ダストのその場測定データに基づいて星間ダストに働く太陽輻射圧を計算した結果、SD16が呈した疑問は解決された。また、カッシーニ探査機による星間ダストのその場測定データやハッブル宇宙望遠鏡での紫外線吸収スペクトル観測から導出された星間ガスの組成から、星間ダストは金属鉄を含有するマグネシウムシリケイトからなることが分かった。(b) R16は、灼熱ダスト集積問題はダストの昇華領域で恒星磁場に捕らえられたダストであり、自転周期の早い恒星ほど灼熱ダストの集積率が高いという仮説を提唱したが、近赤外線超過の観測データと恒星の自転や磁場の強さの関連を調べた結果、灼熱ダスト集積と恒星の自転や磁場の強さとは関係しないことが分かった。また、恒星磁場に捕らえられる前に昇華によってダストは消失するために、R16の提唱した仮説は却下される。
4: 遅れている
研究実施場所が神戸大学から名古屋大学へ変更になったことに伴い、科研費や研究設備の移管などに想像以上の時間を要し、また、その他の業務が非常に多忙となり、本研究課題に費やすことができる時間が想像以上に限られたものとなった。さらに、研究計画時には存在しなかった観測結果が新たに報告され、その観測結果を考慮するように研究計画の見直しや追加の論文投稿などが必要となった。
高速数値計算機を購入し、プログラムのコンパイルは終了している。よって、予定していた計算を行えれば、その結果を考察することで、本研究の成果をまとめることができる。つい最近になって、マックスプランク研究所太陽系科学部門の Martin Hilchenbach 氏から、ロゼッタ探査機で彗星ダストの光散乱に関する知見が得られたと知らされたので、マックスプランク研究所太陽系科学部門へ出向き、そのデータを得る予定である。その結果次第では若干の計画変更が迫られる可能性も否定できないが、大きな変更はないと思われる。
研究実施場所が神戸大学から名古屋大学へ変更になったことに伴い、科研費や研究設備の移管などに想像以上の時間を要し、また、その他の業務が非常に多忙となり、本研究課題に費やすことができる時間が想像以上に限られ、遅延が生じたため次年度使用額が生じた。
旅費および論文投稿料として使用する予定である。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)
The Astrophysical Journal Letters
巻: 839 ページ: L23 (4pp)
10.3847/2041-8213/aa6c2d
Planetary and Space Science
巻: 133 ページ: 1-6
10.1016/j.pss.2016.09.002