研究課題/領域番号 |
26400231
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
本田 敏志 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 研究員 (20425408)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | スーパーフレア / 元素合成 |
研究実績の概要 |
本研究はケプラー衛星のデータによって発見された、太陽型でスーパーフレアを起こす星について、リチウムなどの元素組成を調べることでスーパーフレア星の性質を探り、恒星フレアによって元素合成が起こった証拠が見られるかどうか調べるものである。 初年度にはすばる望遠鏡高分散分光器を使って、スーパーフレア星の観測を行い、50星について良質なスペクトルを得ることができた。これらのデータについて詳細な解析を行い、彩層の活動性を反映するカルシウムの輝線から、スーパーフレア星が高い活動性を示す星であることを分光的に確認し、測光データから見積もられた自転速度などが概ね正しいことを示した。また、温度などの大気パラメータ値からこれらの星は太陽に似た星であることも確認した。 今年度は、これらすばるで得られた分光データの解析結果をまとめ、論文として出版した、さらにリチウム組成について詳細な解析結果を別論文としてまとめ、出版した。リチウム組成は恒星の年齢を反映するとも考えられるので、スーパーフレアを起こす星が若い星かどうか見積もることができる。得られたリチウム組成は広く分散が見られたことから、太陽のような若くない星もスーパーフレアを起こしていることが明らかとなった。また、これまでの結果では、スーパーフレアによって元素が合成された明確な証拠は見られなかった。 フレアそのものを調べるために、西はりま天文台でフレア星の連続分光観測を開始し、フレアによると思われる、Hα輝線の増光を検出することにも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すばるHDSによるデータを得ることができ、今年度はその解析結果についてまとめ、論文として出版した。最終年度はさらに良く知られたM型星などの観測を行い、発展的な研究として進める予定であるが、すでに一部M型星の観測を開始している。また、将来的な観測のために、岡山188cm望遠鏡の高分散分光器でのX線が強い星についての観測も行い、解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度論文にまとめた結果について、研究会での発表などを行い、多くの専門家と議論することでさらにスーパーフレア星の正体に迫るための研究手法を検討する。また、引き続きすばる望遠鏡などを使った観測を行うため、観測時間の確保に努めるとともに、西はりま天文台で、明るいM型のフレア星などについて、連続観測を行いフレアそのものの検出を目指す。フレアによる元素合成については、これまでの観測ではその兆候が見られないことから、リチウムの多い活動的な天体についても調査を行うことを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
投稿論文の出版費が当初見込んでいた額よりも少なく済んだこと、解析用計算機の更新を行わなかったこと、当初参加を見込んでいた研究会に解析が間に合わず参加を見送ったことなどによって余剰金が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は投稿論文をオープンアクセスとする予定のため出版費が当初の見込みより増加する見込みである。また、まとめた論文の成果発表のため、次年度は当初予定よりも多くの研究会へ参加する予定であり、これらに余剰金を充てる。
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