研究課題/領域番号 |
26400233
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
松本 倫明 法政大学, 人間環境学部, 教授 (60308004)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 星形成 / 原始連星 / 分子雲コア / 数値シミュレーション |
研究実績の概要 |
高密度分子雲コアをALMA望遠鏡を用いて観測すると、分子雲コアの中心部にアーク構造が認められる。このアーク構造を説明するために、本研究ではシミュレーションにもとづいた理論モデルを構築し、その成果をまとめた論文が平成27年度はじめに出版された。本年度はさらに磁場の効果を考慮したモデルを構築した。このモデルでは、弱い乱流状態にある分子雲コアにおける星形成を考え、磁場とオーム散逸を考慮したMHDシミュレーションを行ったものである。シミュレーションコードには、適合格子細分化(AMR)法を用いたSFUMATOコードを採用した。シミュレーションの結果、このモデルにおいても磁束によって分子雲コアの中心部にアーク構造が再現される。また、乱流の効果によって、アウトフローと円盤が整列していないことがあることがわかった。このようにアウトフローと円盤が整列しない天体は実際に観測されており、本モデルがこれらの天体におけるアウトフローと円盤が整列しない現象を説明する可能性がある。 平成26年度に原始連星 L1551 NE を説明すための理論モデルを構築したが、平成27年度はこのモデルを発展させ、連星系一般における質量降着モデルを構築した。このモデルの構築のために、適合格子細分化(AMR)法を用いたSFUMATOコードによる数値シミュレーションを遂行した。その結果、周連星円盤に非対称な構造が現れることを発見した。このような周連星円盤の非対称な構造は、ALMA 望遠鏡を用いて観測された原始連星においても存在が示唆されており、観測的にも重要な現象である。いくつかのパラメータを変えて計算を行い、周連星円盤の非対称構造はガスの温度などに依存するものの、普遍的に現れることを確認した。日本天文学会の年会において、周連星円盤における非対称構造について発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
磁場とオーム散逸を考慮した乱流分子雲コアの研究をまとめ、現在は論文執筆中である。 連星系における質量降着シミュレーションでは、周連星円盤に非対称性が現れることを発見した。 連星系における質量降着シミュレーションでは、数値計算法についても進展があった。従来のシミュレーションでは、連星が静止している回転系を考え、遠心力とコリオリ力という見かけの力を考慮して計算を行っていた。しかし、本研究を遂行する過程で、計算結果は見かけの力の実装方法に依存することを発見した。本研究では回転系における計算を取りやめ、静止系における計算を行うことで、従来の計算よりも高精度な計算を実現した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、磁場とオーム散逸を考慮した乱流分子雲コアの研究成果を論文に投稿する。 また周連星円盤の非対称構造についても論文にまとめる。 連星系における質量降着シミュレーションに磁場を考慮する。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文の投稿が次年度以降になったため。 当初は大規模なディスクアレイを購入する予定であったが、小規模な RAID システムを多数購入するほうがコストパフォーマンスが良いことがわかった。このため、データを格納する機器を、研究の進捗に合わせて購入することにしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に論文を投稿し、投稿料を支出する。 シミュレーションデータの増加に合わせて小規模なRAIDシステムを複数回に分けて購入する。
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