研究実績の概要 |
1.磁極反転理論モデルの拡張 及び 他の統計モデルとの比較 昨年度から研究してきたマクロスピンモデルの次元を上げる研究では、磁極の極付近でのふらつきの速度を観測データと一致させるように、フィッティング・パラメータを選び直した。これにより、磁極のふらつきに関しても、観測データをほぼ完璧に再現できるようになった。また、地磁気の場合、磁極の移動はLevy分布やLog-Normal分布に従うという先行研究があるため(Carbone et al., 2006, Ryan & Sarson, 2007)、我々の磁極反転理論モデルが従う統計について調べ、先行研究で提案されていた分布関数との比較を行った。これらの結果を論文草稿(主著者は大学院生の國友 有与志 氏)に加筆し、現在投稿中である。
2.ターゲット天体の偏光分光観測 昨年度に改修したVESPolAの R=20,000 の高分散の偏光分光モードを用いて偏光分光の試験観測を行ったが、分解能が R=20,000を達成できていないことが判明した。原因の究明に時間がかかったため、まず従来の R=8,000モードを用いて、ターゲット天体の磁場変動を検出すべく、直線偏光分光のモニター観測を行った。2016年8月から11月までの9夜に、標準星を含めて12天体(過去にVESPolAでの観測実績がある HD137909, HD188041, 過去にフランスのグループが観測したHD190771, 強磁場星、セファイド型変光星など)を観測した。これらの観測結果から、数か月・数年単位での磁場変動が検出された天体を優先的に観測するように、次年度以降の観測計画を練り直す予定である。
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今後の研究の推進方策 |
VESPolA装置の改修は、大学院生の樽田氏が中心となって進める。まずR=20,000の高分散モードを達成させる。次に、直線偏光と円偏光の試験観測を実施しながら、円偏光モードの観測手法を確立する。平成28年夏頃からは、円偏光モードを用いて恒星の磁場変動のモニター観測を始めたい。 また、樽田氏と共同で行っている太陽観測衛星のデータ解析を継続し、さまざまなスペクトル型の恒星の磁場変動を予測し、僅かな磁場変動をいち早く検出するために必要な装置のスペックと観測条件を明らかにする。 偏光分光観測では高いSN1,000が必要とされるため、スリット上の光を有効に使うように、京都産業大学神山天文台で開発中の次世代補償光学装置(AO)をVESPolAへ実装する計画がある。その検討を継続して進める。 理論面では、さまざまなスペクトル型の恒星内部の対流渦の分布と、我々のマクロ・スピンモデルのパラメータとの関係をつける。
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