研究課題/領域番号 |
26400234
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
中道 晶香 京都産業大学, 神山天文台, 研究員 (30356125)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 円偏光 / 恒星 / 磁場 / 実視連星 / ブラックホール / 銀河形成 / 星形成 / 降着率 |
研究実績の概要 |
「理論研究について」 超巨大質量ブラックホールが先に形成され、そのジェットが星形成を推進するモデルを提案し、星形成率と降着率を変化させたシミュレーションを行った。星形成が行われる場所と時間が変わることにより、さまざまな銀河が形成されるという結果を得た。 恒星磁場がダイナモ起源なのか、それとも星形成時の星間磁場が凍結された化石場起源なのかを区別できる可能性を持つ新しいアプローチとして実視連星の磁場を検討した。恒星の質量放出率を仮定し、恒星風のラム圧と磁気圧がつりあう磁気圏半径以内が恒星磁場の影響下にあるとする。実視連星間の距離が磁気圏半径の内側に入っていることを確認し、神山天文台におけるシーイング4秒角以上の離角で、かつ6等級より明るい観測候補天体を選定した。想定される磁場強度から、神山天文台のVESPolAを用いた観測における偏光スペクトルのシミュレーションを行った結果、VESPolAに波長分解能R = 20,000の円偏光モードを追加することにより、実視連星の磁場の極性を検出可能であることを示した。 「装置開発と観測について」 VESPolAの高分散化と円偏光モードの開発を行った。その際、円偏光の観測方法が確立されていなかったため、光学軸基準を事前に測定しておく観測方法と、未知のまま後で算出する観測方法との2種類の方法を検討し、両者ともシステマティック・エラーが小さいことを確認した。なお、光学軸基準が未知の場合の観測方法は世界に例が無く、また、円偏光観測の誤差の評価も前例が無かったため、これらは世界初の成果である。 選定した実視連星、及び、過去に直線偏光モードで観測していた恒星の磁場極性のモニター観測を行った。年30夜程度観測したが、あまり天候に恵まれない年であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
晴天率が例年より低く、天気が安定しなかったため、長時間の観測が必要な偏光観測を予定通り進めることができなかった。 光学軸基準が未知の場合の円偏光観測の誤差の評価の前例が無く、時間がかかった。なお、誤差の評価として満足な結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
星形成率に関する理論的研究は、ジェットが間欠的な場合も含めて星形成にかかる時間の見積を再計算し、研究を完成させて論文にまとめる。 円偏光の観測については、まず2種類の観測方法を実際の観測データに適用し、最適な方法を探ると共に、偏光観測の精度を向上させていく。実視連星の磁場極性のモニター観測を継続し、極性反転の瞬間を捉えたい。さらに、連星の磁場の起源がダイナモなのか、それとも化石磁場なのかを判定する結論を出す。これらの結果を論文にまとめる。 また、近い将来、円偏光と直線偏光の同時観測モードを実現させたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年夏から年末まで悪天候が続き、荒木望遠鏡に割り当てられたVESPolA観測日にほとんど晴れず、観測データを取得できなかった。現在は優先的に観測を継続中だが、研究計画が遅れているため、観測モードがしばらく続く予定である。購入を計画していたパソコンを用いた大容量のデータ解析を始められるのは次年度になるため、パソコン購入を次年度へ延期することにした。平成28年度は、得られた観測データがまだ少ないため、各データごとにコーディングの試行錯誤をしている段階である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の早い時期にデータ解析用のパソコンの購入を予定している。 大容量の観測データが溜まってくるため、これらを一気に処理をする必要が生じる。
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