研究課題/領域番号 |
26400235
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研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
北井 礼三郎 佛教大学, 教育学部, 非常勤講師 (40169850)
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研究分担者 |
一本 潔 京都大学, 理学研究科, 教授 (70193456)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 太陽 / プラージュ域加熱 / ジェット現象 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、京都大学飛騨天文台ドームレス太陽望遠鏡を用いて、太陽プラージュ領域彩層の加熱機構を調査するための観測を実施した。補償光学装置により大気擾乱による画像の乱れをリアルタイムで補正しつつ、水素Hα線、CaII K線、およびCaII IR (8542Å)線の分光観測を行った。観測モードは、ケーデンス3.5秒で空間スキャンを繰り返すというものを採った。 その結果、プラージュ域の彩層スペクトルには、ジェット現象が多数検出された。その視線速度は20‐30㎞/sec程度で、フィルター直接像観測で発見されていたダイナミック・ファイブリルというジェット現象に対応するものであると確認された。実際分光観測の結果は、このガスの運動は太陽表面から放出されてやがては落ち込んでゆくという動きが明瞭に確認された。但し、ダイナミックファイブリルは視線と直交する方向の運動としてとらえられていたものの、今回の分光観測で視線方向にも運動していることが見いだされた。このことから、恐らくはプラージュ域の磁力線に沿ってジェットが噴出していることを示唆している。 以上のことは、(1)ショック波が下層から伝搬してきてジェットを生み出す。そして元になるショックがプラージュ彩層域を加熱している説、あるいは(2)加熱そのものは、アルフベン波等別の機構で行われており、その加熱された大気に音波ショックが重なってジェットを生み出すという説のいずれかで解釈できる。この両説を判別するには、ジェットが起きていない時点での分光スペクトルの詳細解析が必須である。現在29年度観測の詳細解析をモデル大気シミュレーションの結果を援用して研究を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の目的を達成するためには、観測対象の出現および晴天で安定した観測条件を必要とするものであった。そして、研究計画最終年度にこれらの条件を満足する観測を実施することに成功した。その分光観測の詳細解析は、十分なデータ解析時間、太陽大気中の放射伝搬シミュレーションを並行して実施することを必要としており、現在は初期結果を得たところである。研究期間を一年延長してより深い研究に進むことを計画している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、太陽彩層の加熱機構を解明するうえで重要な寄与をなすものと考えている。研究の当初計画期間の最終年度に高い質の観測データが得られたことがあり、その詳細解析研究は重要であると考えている。従って研究課題の延長を申請したところ、承認を得られたので、延長期間のうちで結論を得る予定をしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では、平成29年度に中国雲南天文台との共同研究をする予定で旅費を想定していたものの相手側の中国研究者が来日して研究打ち合わせが可能となったのでその分が執行できなかった。 平成29年度に本研究の目的に合致した高質の観測データが京都大学飛騨天文台で得られたこともあり、継続研究を行う必要が出てきたため、研究期間を延長申請して承認されたので、次年度使用額はその研究の継続および飛騨天文台での追加観測旅費に使用する計画である。
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