この課題では、太陽表面にみられる活動現象の元となっている多彩な微細構造が果たす役割を観測的に解明することを目的とした。実績の主たるものは3項目である。
(1)δ型黒点とフレア活動:太陽活動サイクル23の11年間について統計解析の結果、δ型(特にβγδ型)の黒点は他の型の黒点に比べて、強いフレアを発生しやすいことを確認した。特にデルタ型黒点で面積が大きなものほど強いフレアを発生し、黒点面積とフレア強度との間にはべき関数的な相関があることを発見した。βγδ型黒点については、磁場配位が4重極に成長するいう特徴があることを見出した。この成長形態は、太陽対流層内でガスの流れによってコイル状に2回ねじれた磁束管の浮上により4重極磁気配位になるというモデルを提案した。この磁気配位が、デルタ型を形成しかつその中の反平行磁気配位がフレアを引き起こすというモデルである。 (2)黒点半暗部の形成:太陽観測衛星「ひので」のG-bandで観測された黒点半暗部の形成機構を解析したところ、(1)磁束が次々と集積してゆくとき、(2)磁束の浮上が急激な場合、および(3)磁束管が回転しているときあるいはねじれた磁束管が浮上してくるときのいずれかの場合に黒点半暗部が形成されることを見出した。この結果は、半暗部形成にMagnetic Pumping機構が働いているということを初めて観測的に示す成果となった。 (3)プラージュ加熱問題:太陽表面の活動領域には、彩層で加熱が長時間続いているプラージュという領域がある。この加熱の機構はいまだ未解明である。この課題では、プラージュ域のスペクトロヘリオグラム観測を実施し、加熱が磁気再結合によるエネルギー開放によるものか、あるいは未知の高周波電磁流体波の散逸によるのかを切り分け可能な高い時間・空間分解能の資料を得た。現在、精力的に解析を続行している。
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