研究課題
本研究は、すばる望遠鏡で稼働中の可視光撮像分光装置FOCASに組込み可能な面分光ユニットを開発し、それを用いて銀河と活動銀河中心核の進化過程に関する詳細研究を推進することを目標としている。面分光は、天体の各場所のスペクトルを一度の露出で得られるため、銀河などの広がった天体の詳細研究には最適な手法として注目されている。また、本研究は次世代超巨大望遠鏡Thirty Meter Telescopeの可視光撮像分光装置WFOSに組込み可能な面分光ユニット開発のための技術実証試験としての意味もある。平成25年度までに既に光学設計を終了させ、いくつかの技術課題について試作を通して実現可能性を調査してきた。さらに製作できる光学素子から順次製作を既に開始している。平成25年度には軸外し楕円面の試作も行ったが、目標表面精度(200 nm PV)を達成できなかったために、平成26年度に加工工程を見直して再度試作を行った。その結果、目標面精度を達成できることを確認し、本番用基板の製作を開始した。この面分光ユニットは合計70個程度のミラーがあり、それらを精度良く配置することが一つの技術課題となっている。多数のミラーのアライメント調整を一つ一つ行うことは非効率的であり、調整機構を組み込む事も困難である。そこで、我々の面分光ユニットではミラーホルダーとミラーを精度良く製作しておき、ミラーをホルダーに入れるだけで、アライメント精度を達成できるようにしている。平成26年度には光学素子ホルダーの概念設計を行い、平成27年度はこの概念設計を基に詳細設計・製作を進める。
3: やや遅れている
計画通り平成26年度中にほぼ全ての光学素子の製作を完了させることができた。光学素子ホルダーに関しては、設計・製作を平成26年度中に終了させる予定であったが、軸外し楕円面の評価やホルダーの概念検討に時間をとられたために、詳細設計・製作まで行うことができなかった。そのため評価を「やや遅れている」にした。
遅れている光学素子ホルダーの設計は外部業者に詳細設計を依頼することで、遅れを解消できる見込みである。製作は国立天文台の先端技術センターで行う予定である。しかし同センターは他に多数の受注を抱えているので、加工受注状況を見ながら、場合によっては外部委託することも検討する。
試作の経験を踏まえて軸外し楕円面基板の製造工程を見直した結果、試作時よりも短期間で製造できるようになり、単価が低くなった。また、2個の試作品の完成度が非常に良かったので、それらを実機に使用することにした。さらに軸外し楕円面基板の製作費用の一部は他の経費でまかなうことができた。これらの結果、本経費から軸外し楕円面基板に支出する額が大幅に低くなった。本経費に余裕ができたので、遅れている光学素子ホルダーの設計を加速するために、外部業者へ詳細設計を依頼することにした。しかし我々の概念設計が遅れたために平成26年度中に依頼することができず、次年度使用額が生じている。
平成27年度には光学素子ホルダーの設計を加速するために詳細設計を外部業者へ委託する。また製作は国立天文台の先端技術センターで行う予定であるが、同センターは他に多数の受注を抱えているので、加工受注状況を見ながら、場合によっては外部委託することも検討する。
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Proc.SPIE
巻: 9151 ページ: 915149
10.1117/12.2054838
http://atc.mtk.nao.ac.jp/TMT/index_IFU.html