研究課題/領域番号 |
26400236
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
尾崎 忍夫 国立天文台, TMT推進室, 専門研究職員 (60532710)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 光学赤外線天文学 / 面分光 / 銀河進化 / 活動銀河中心核 / すばる望遠鏡 / 次世代超巨大望遠鏡 / Thirty Meter Telescope |
研究実績の概要 |
本研究は、すばる望遠鏡で稼働中の可視光撮像分光装置FOCASに組込み可能な面分光ユニットを開発し、それを用いて銀河と活動銀河中心核の進化過程に関する詳細研究を推進することを目標としている。面分光は、天体の各場所のスペクトルを一度の露出で得られるため、銀河などの広がった天体の詳細研究には最適な手法として注目されている。また、本研究は次世代超巨大望遠鏡Thirty Meter Telescopeの可視光撮像分光装置WFOSに組込み可能な面分光ユニット開発のための技術実証試験としての意味もある。 面分光ユニットには大きく分けて3つの方式が存在するが、対象天体が非常に暗いことを考慮して、本研究で取り組む面分光ユニットでは一番効率の良いイメージスライサー方式を採用することにした。しかしイメージスライサー方式は非常に多数のミラーを用いる複雑な光学系のために各光学素子を精度良くアライメントさせることが技術課題となっている。本研究では国立天文台先端技術センターに整備されている超精密切削加工機や精密ワイヤー放電加工機を駆使して、光学素子ホルダーや治具を精度良く製作し、アライメント精度を達成できるようにしている。 また既存の装置に組み込むことで労力とコストを大幅に削減できるが、一方で面分光ユニットのサイズと重量の厳しい制限が課されている。この制限条件を満たす光学設計解を見出すことが、もう一つの技術課題となっている。 平成26年度までに制限条件を満たす光学設計に成功し、それに基づいた光学素子ホルダーや治具の試作を行い、要求精度を達成できることを確認した。また製作できる光学素子から製作を開始した。平成27年度には、それらの試作経験に基づいて、光学素子ホルダー・治具・筐体の詳細設計を行った。平成28年度には組立調整を行い、すばる望遠鏡での試験観測・科学観測を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
面分光ユニットの光学素子については計画通り平成26年度までにほぼ全て製作することができた。光学素子フォルダーや筐体についても概念設計までは行ったが、詳細設計・製造を行うことができなかった。これらについては平成27年度中に詳細設計・製作をほぼ完了させることができた。しかし当初、国立天文台の先端技術センターで製作予定であったが、同センターが請け負っている仕事量が多いために、外部業者に一部の製作を委託せざるを得なくなった。この方針変更のために製作が遅れてしまった。この遅れのために平成27年度中に開始予定であった科学観測は平成28年度に行う予定である。 一方で、科学観測で得られたデータを用いて解析ソフトの開発を行う予定であったが、一部の解析ソフトについて他の面分光装置で得られた観測データを用いて開発を進めることができた。これにより、科学観測を行ってから、学会発表や論文化までの時間を短縮できると期待できる。 上記のように遅れている部分もあるが、先行して進んだ部分もあるので、「おおむね順調に進展している。」との評価にした。
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今後の研究の推進方策 |
今年度中に面分光ユニットの組立・調整を行い、ハワイへ輸送し、FOCASへ組み込んでの試験を行う。この試験で問題がなければ、試験観測を行い、性能評価のための天体データを取得する。このとき、科学的成果も挙げられる天体のデータも取得しておく。さらに、試験観測でも問題がなければ科学的観測に用いられることになる。
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次年度使用額が生じた理由 |
光学素子ホルダー・治具・筐体の詳細設計・製作が平成27年度にずれ込んだことにより、当初計画で平成27年度に予定していた試験観測・科学観測が遅れてしまったので、ハワイ観測所への旅費と輸送費を繰り越す必要が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に製作できなかった残りの部品の製作費用と、ハワイ観測所における試験・観測を行うための旅費と輸送費に使用される予定である。
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