本研究は、すばる望遠鏡で稼働中の可視光撮像分光装置FOCASに組込み可能な面分光ユニットを開発し、それを用いて銀河と活動銀河中心核の進化過程に関する詳細研究を推進することを目標としている。面分光は、天体の各場所のスペクトルを一度の露出で得られるため、銀河などの広がった天体の詳細研究には最適な手法として注目されている。また、本研究は次世代超巨大望遠鏡Thirty Meter Telescopeの可視光撮像分光装置WFOSに組込み可能な面分光ユニット開発のための技術実証試験としての意味もある。 面分光ユニットには大きく分けて3つの方式が存在するが、対象天体が非常に暗いことを考慮して、本研究で取り組む面分光ユニットでは一番効率の良いイメージスライサー方式を採用することにした。しかしイメージスライサー方式は非常に多数のミラーを用いる複雑な光学系のために各光学素子を精度良くアライメントさせることが技術課題となっている。本研究では国立天文台先端技術センターに整備されている超精密切削加工機や精密ワイヤー放電加工機を駆使して、光学素子ホルダーや治具を精度良く製作し、アライメント精度を達成できるようにしている。また既存の装置に組み込むことで労力とコストを大幅に削減できるが、一方で面分光ユニットのサイズと重量の厳しい制限が課されている。この制限条件を満たす光学設計解を見出すことが、もう一つの技術課題となっている。 H27年度までにサイズ・重量制限を満たす光学系・機械系の設計・製作や、光学素子ホルダー・治具の試作を行った。最終年度(H28年度)にはFOCASへの組込み試験を行い、問題ないことを確認した。
|