研究課題
本年度は主として超新星爆発からの軽いrプロセス元素の合成、そして超新星爆発と中性子星合体を考慮した銀河化学進化の研究を中心に行った。超新星のモデルは、一般相対論およびニュートリノ輸送を考慮した2次元数値流体シミュレーションの結果を用いた。8倍太陽質量から27倍太陽質量までの6モデルについて元素合成の計算を行った。その結果、質量が太陽質量の8倍から10倍程度の超新星の場合は、原子番号40程度(質量数90程度)までの鉄より重い元素を合成することが明らかになった。また、太陽質量の10倍以上の典型的な超新星爆発は、鉄より重い元素をほとんどつくらないことが確かめられた。いずれの場合も超新星爆発で重いrプロセス元素が作られることはなく、せいぜい原子番号50程度までの軽いrプロセス元素の合成にとどまることが示された。前年度までの結果と総合的に判断すると、rプロセス元素のほとんどは中性子星合体によってつくられ、軽いrプロセス元素の一部が超新星爆発によってつくられたと考えられる。銀河化学進化については、超新星爆発による軽いrプロセス元素合成と中性子星合体による全てのrプロセス元素合成を仮定した。ミニハローが合体して現在の一つの銀河ハローがつくられたという階層構造モデルを用い、また、超新星爆発や中性子星合体が確率的に起きるモンテカルロ法を導入した。中性子星合体は超新星に比べて1000分の1程度の頻度でしか起こらないため、質量が最小のミニハローについては10分の1程度の確率でしか中性子星合体が起こらないことが示された。これは、銀河ハローでrプロセス元素が豊富な星の割合とほぼ一致している。
2: おおむね順調に進展している
現在のところ、ほぼ研究計画通り進展している。
米国の重力波望遠鏡LIGOにより、今後1年に1イベント程度の中性子星合体からの重力波の検出が見込まれている。また、日本のKAGRAやヨーロッパのVirgoもこれに加わることになる。それに備えて、中性子星合体によるrプロセス元素の崩壊熱による電磁波対応天体の観測予測について重点的に研究を行う。同時に、様々な質量の中性子星合体、そしてブラックホール・中性子星合体についてもrプロセスの計算を行う。銀河化学進化の計算も継続していく。
数値計算のデータが膨大になり、大容量のハードディスクの購入が必要となるため。
数値計算データの保存のために、大容量ハードディスクを購入する。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 4件、 オープンアクセス 2件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件、 招待講演 3件)
JPS Conference Proceedings
巻: 14 ページ: 020208, 3 pp.
10.7566/JPSCP.14.020208
巻: 14 ページ: 020210, 3 pp.
10.7566/JPSCP.14.020210
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10.1093/mnras/stw404
Journal of Physics: Conference Series
巻: 665 ページ: 012059, 3pp
10.1088/1742-6596/665/1/012059
巻: 665 ページ: 012056, 5pp
10.1088/1742-6596/665/1/012056