研究課題/領域番号 |
26400241
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村山 斉 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任教授 (20222341)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 素粒子物理 / 原子・分子物理 / 宇宙物理 / 数理物理 / 物性物理 |
研究実績の概要 |
宇宙の暗黒物質が自発的対称性の破れで生まれる模型を提案した。QCDをコピーし、クォークの質量を縮退させると、π中間子が安定粒子となる。Wess-Zumino項による3->2消滅によって熱的残存量が決まり、質量もQCDと似た300MeVが適当である。自己相互作用があるため、矮小銀河や合体銀河の質量分布の謎を自然に説明できる。 標準模型での電弱対称性の破れにまつわる有効場の理論を構築する一般論を構築した。重い粒子を積分する際、今までの手法では計算後ゲージ不変な演算子の形にまとめるのが煩雑であった。共変微分展開によって有効演算子の一般的な公式を導いた。加えて物理観測量へのマッチングの方法を明確化した。 超対称性の自発的な破れが低いスケールで起きる模型では、グラビティーの質量が宇宙論的な制限にひっかかる。スカラーの質量を最低次で生成すると自乗質量の和則によってタキオンが出るという「定理」のため、ループにして破れのスケールを上げる必要があったからである。しかし最低次でも負の自乗質量がベクトル的物質場にのみ現れるようにすれば、問題がないことを指摘した。このため破れのスケールをあまり上げずに実験と矛盾しない質量を出すことに成功し、宇宙論的に問題のない模型を構築した。 他にも、標準模型の電弱対称性の破れを起こすメカニズムを高ルミノシティーLHCで探索するため、WZ終状態の再散乱による位相のズレを見る方法を提案した。以前提案した超対称性の自発的な破れが余剰次元の境界条件で起きる理論では、ヒッグス粒子の質量が自動的に大きくなることを発見した。超対称大統一理論の自発的な破れによる質量スペクトルを用い、ゲージ・メディエーションが自然に起こる模型を提案した。また、以前提唱したニュートリノの混合角は群のハール測度で分布するというアナーキー理論が、現在の実験データと全く無矛盾であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
暗黒物質が擬南部・ゴールドストン粒子である「強く相互作用する重い粒子」(SIMP)の可能性は、予期しなかった成果であり、その後実験的検証可能性についての現象論が進んでいる。特に現在つくばの高エネルギー加速器研究機構で建設中のSuperKEK-Bで探索する可能性があることを現在まとめており、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
暗黒物質が擬南部・ゴールドストン粒子である「強く相互作用する重い粒子」(SIMP)の可能性を中心に、自発的な対称性の破れが宇宙論に与える影響を系統的に調べていく。一方有効場理論についても、有効演算子の系統的な分類の方法を考察し、一般論を構築する。また、超対称性を自発的に破る新しい場の理論の模型も構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していたラップトップコンピュータは、現在使用中のものがまだ問題ないため、購入を伸ばすことにしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
ラップトップを後年度に購入する。
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