研究課題/領域番号 |
26400251
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
梅田 貴士 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (40451679)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 格子QCD / クォークグルーオンプラズマ / 状態方程式 |
研究実績の概要 |
本研究者らが提唱した固定格子間隔アプローチによって、世界で初めてウィルソンクォークを用いたQCD 状態方程式の格子QCD 計算が可能になった。現在行われている非KS クォークによる有限温度格子QCD プロジェクトの多くでこのアプローチが採用されている。本研究課題では、さらに偏移境界条件(Shifted boundary conditions)の手法を取り入れることによって、固定格子間隔アプローチの弱点である温度分解能の劇的な改善を目指している。 今年度の研究でも引き続き、グラディエントフローの手法を用いた状態方程式計算に取り組んだ。グラディエントフローの手法では従来型の積分法による計算と異なり、ベータ関数を必要としない状態方程式の直接計算を行うことが可能になった。今年度はこれまでに生成した物理点におけるウィルソンクォークを用いたQCD配位の元で状態方程式の計算を行ったが、グラディエントフローの手法を用いても統計精度がまだ不十分であることと、計算した温度領域が予想していたよりも高く、相転移の低温側のデータが取れていないことが分かった。また、フロータイム依存性に関する解析で格子間に関する依存性の寄与が問題になることも明らかとなった。 その為、前年度までに行っていた重いクォーク質量における結果の格子間隔依存性を調べる為に、beta=1.90の格子間隔が粗いQCD配位の生成と計算を実行中である。 これらの研究成果により、国際会議での発表や、研究論文を発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
状態方程式を計算する為に一番の課題であったベータ関数を求めること無く、状態方程式を計算することが可能になるグラディエントフローの手法を採用し、ウィルソンクォークでの状態方程式を計算した。本研究の最終目標である物理点における状態方程式の計算結果の現状報告を行うことができた。さらに、グラディエントフロー方法における状態方程式の計算における格子間隔依存性の様子を調べる為に、格子間隔が異なる配位の生成を行うことが出来た。ゼロ温度に加えて、一連の有限温度配位も生成することが出来た。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の計算において、物理点での計算が統計精度が不十分であることと、計算した温度領域が予想よりも狭く、相転移の低温側のデータが足りないことが判明した。次年度ではこれらの温度点を増やしつつ、統計精度を上げることが必要となる。また、グラディエントフロー方法における状態方程式の計算における格子間隔依存性の様子を調べる為に、格子間隔が異なる計算を引き続き進めていく。この計算により、重いクォーク質量の状態方程式の連続極限を議論することが可能になるのに加えて、物理点での解析方法への示唆を得ることが期待できる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由)国内学会などで共同研究者との打合せを行うことが出来、国内出張による研究打合せの回数が少なく済んだ為 (使用計画)研究成果でもあるQCD配位の保存のために購入するHDDの容量を増やすのに使用する。
|