QCD結合定数の精密決定: 将来のILC実験によってトップ・クォーク質量と湯川結合定数が精密に決定された暁には、両者の理論的な関係を確認することになるだろう。これらの二つの物理量を関係づけるためには、QCD結合定数の精密な値が必要になるが、リニア・コライダーによる物理量の測定精度を活かすためには、現在知られているQCD結合定数の精度(約1%)では不十分である。素粒子の標準理論が予言するトップ・クォーク質量と湯川結合定数の関係を高精度でテストするためには、関係するパラメーターもトップ・クォーク質量と同じ精度で決定しておく必要がある。このような経緯から、本年度は格子QCDによるWilson loopの数値実験データーと摂動論的QCDから計算されたQCDポテンシャルの比較によって、QCD結合定数の精密決定を目標として研究を進めてきた。研究は粗終了し、得られた結果は既に学会やワークショップ等で発表済みである。論文としての出版はまだであるが、現在査読付きのジャーナルへ投稿する準備を進めている。
重いクォーク対生成の高次計算:昨年度公開したコンピューター・プログラムQQbar_thresholdは、その後も新たに計算された量子補正の効果を追加し、バージョンアップを行なっている。また、ユーザーが新しい数値計算を実行できるように機能の拡張も行い、ホームページ上(Hepforge)でメインテナンスと一般公開を行なっている。
|