研究課題/領域番号 |
26400256
|
研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
太田 和俊 明治学院大学, 法学部, 准教授 (80442937)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 超対称ゲージ理論 / 局所化 / 超弦理論 / クイバーゲージ理論 / 格子ゲージ理論 / 超対称量子力学 |
研究実績の概要 |
1. 超対称クイバー量子力学における厳密計算 本研究では超対称クイバー量子力学において、本研究課題の主目的である局所化の方法を用いて「超対称指数」の計算を厳密に行った。超対称クイバー量子力学は超重力理論におけるBPS束縛状態の粒子と対応関係にあることがDenefらによって予想されているが、Higgs相における本研究の計算で対応するBPS束縛状態数が厳密に導出できることを示した。特筆すべき点は、本研究の計算手法では局所化の方法での計算を正則化するため、理論のR対称性をゲージ化して分配関数が局所化する点(固定点)を留数積分として評価を行ったことである。本研究は査読付き雑誌に掲載済みである。
2. 超対称格子ゲージ理論における厳密計算 本研究では2次元のN=(2,2)超対称ゲージ理論を格子状で正則化した理論において、局所化の方法の適用を行い、分配関数等の厳密な計算を行った。本研究を遂行するにあたり、まず2次元のN=(2,2)超対称ゲージ理論を一般のリーマン面を格子分割した格子上で定義する方法について研究を行った。次に、格子上で定義された超対称ゲージ理論に対し、局所化の方法を適用し、その分配関数を厳密に計算することに成功した。得られた分配関数の結果は連続極限で通常の超対称ゲージ理論の厳密な結果と一致し、数値計算に依らない格子ゲージ理論の結果として非常に興味深いものである。本研究では、Harish-Chandra-Itzykson-Zuber積分と呼ばれるユニタリー行列積分の局所化を応用しKazakov-Migdal模型と呼ばれる理論との関係につても論じている。これらの2つの研究は査読付き雑誌に掲載された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では局所化の方法を様々な超対称ゲージ理論に適用し、その性質を調べることを目的としているが、これまでの研究で、超対称クイバーゲージ理論への適用、および超対称格子ゲージ理論への適用が達成できた。また、これまでの研究によって、拘束条件下と積分変数がユニタリー行列である場合について、局所化の方法をいかに取り扱うべきかについて多くの知見を得ることができた。また、一般的な格子状でどのように超対称性を実現し、局所化を適用していくかについても多くの理解が得られたため、もっと広いクラスの超対称理論についても局所化の方法を適用していく基礎が形成されたと考えられる。 よって、本研究課題における初年度の研究目的については、おおむね研究計画通りに進展していると結論できる。
|
今後の研究の推進方策 |
当該年度において、拘束条件下での超対称クイバー量子力学、および格子上の超対称ゲージ理論に対する局所化の方法の適用について多くの知見と理解が得られた。今後はこれらの研究結果を基に、超対称ゲージ理論における局所化の方法についてより正確かつ本質に迫る理解を求めるように研究を推進していきたい。 まず、超対称クイバーゲージ理論については、当該年度の研究ではHiggs相での超対称指数の導出のみであったが、超重力理論におけるBPS束縛状態の粒子と正確に比較するためにはCoulomb相での局所化を遂行する必要がある。今後の研究ではCoulomb相での局所化を行うための手法の開発を行っていく。 次に、超対称格子ゲージ理論のおいて当該年度の研究で局所化が適用できることを示したが、その局所化の方法がどのようなプロセスによって機能しているのか不明な点も多い。格子ゲージ理論の利点は計算機の上で数値的にシミュレーション可能なことであるので、今後の研究としては超対称ゲージ理論を具体的に数値計算を行い、その計算結果と局所化の方法を用いた結果との比較、および数値計算において局所化がどのように機能しているのかについて考察を行っていきたい。さらに、より一般的な超対称格子ゲージ理論の構成とスピン鎖模型など他の離散的な可積分模型との関連についても局所化を通じた研究を行っていきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
物品費と旅費については当初の計画通りの遂行であるが、実際の購入金額と旅費の実費について若干の誤差が生じたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度はサバティカルの年度に相当するため当該年度より出張の機会が増え、支出の額も多くなることが予想される。従って、次年度使用額があっても増加分の海外出張の旅費等で使用していく計画である。
|