研究実績の概要 |
M理論の基本構成要素であるM5ブレーン上の低エネルギー励起のなす理論の探究は、M理論の全貌を解明する上で欠かせない。中でも、M9ブレーンに重なったM5ブレーン上に現れる低エネルギー理論はE弦理論として知られ、多重M5ブレーン上の理論と並ぶ基本的な模型である。ここ数年、多重M5ブレーン上の理論の余剰次元をコンパクト化することで、多種多様な4次元超対称場の理論を実現し、その性質を調べる研究が大きく進展している。これに倣い、本研究では今年度、E弦理論の研究成果を用いて基本的な4次元N=2超対称共形場理論の厳密な量子スペクトルを調べる研究を行った。 4次元N=2超対称共形場理論は、一般にLagrangianに基づく直接的な記述を持たないこともあって、謎が多く解明の待たれている理論の一つである。現在では沢山の4次元N=2超対称共形場理論が知られているが、中でも古くから知られているものに、1次元のCoulomb branchをもつH_0,H_1,H_2,D_4,E_6,E_7,E_8型の一連の理論がある。 一般に超対称性を持つ場の理論において、BPS指数(BPS index)は理論の厳密な量子スペクトルを特徴付ける最も基本的な関数の一つである。上述の4次元N=2超対称共形場理論については、D_4型の場合を除き、BPS指数について、これまでほとんど調べられていない状況であった。一方でE弦理論については、BPS指数が長年にわたって調べられている。 本年度の研究では、E弦理論を特別なモジュラスを持つ2次元トーラスにコンパクト化することで、上述のH_0,H_1,H_2,E_6,E_7,E_8理論を実現する方法を明らかにした。この実現法に基づき、これらの超共形場理論のBPS指数の構造を明らかにした。さらに、これらの理論のBPS指数を特徴付ける基本的な指数(exponents)と不変量を具体的に求めた。
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