研究実績の概要 |
M理論の基本構成要素であるM5ブレーン上の低エネルギー励起のなす理論の探究は、M理論の全貌を解明する上で欠かせない。中でも、M9ブレーンに重なったM5ブレーン上に現れる低エネルギー理論はE弦理論として知られ、多重M5ブレーン上の理論と並ぶ基本的な模型である。ここ数年、多重M5ブレーン上の理論の余剰次元をコンパクト化することで、多種多様な4次元超対称場の理論を実現し、その性質を調べる研究が大きく進展している。これに倣い、本研究では昨年度に引き続き、E弦理論の研究成果を用いて基本的な4次元N=2超対称共形場理論の厳密な量子スペクトルを調べる研究を行った。また、E弦理論自 体の分配関数に関して、研究代表者が2011年に開始した研究の改良を行った。 4次元N=2超対称共形場理論は、一般にLagrangianに基づく直接的な記述を持たないこともあって、謎が多く解明の待たれている理論である。中でも古くから知られている代表例として、1次元のCoulomb branchをもつH_0,H_1,H_2,D_4,E_6,E_7,E_8型の一連の理論がある。 一般に超対称性を持つ場の理論の研究において、BPS指数(BPS index)は理論の厳密な量子スペクトルを特徴付ける最も基本的な関数である。上述の4次元N=2超対称共形場理論については、D_4型の場合を除き、BPS指数について、これまでほとんど調べられていない状況であった。一方でE弦理論については、BPS指数が長年にわたって調べられている。 本年度の研究では、E弦理論を特別なモジュラスを持つ2次元トーラスにコンパクト化して上述のH_0,H_1,H_2,E_6,E_7,E_8理論を実現し、これらの理論のBPS指数の構造を明らかにした。また関連して、研究代表者が2011年に調べたE弦理論のBPS指数の構造についても、記述の精密化を行った。
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