研究実績の概要 |
LIGOチームによる重力波初検出によって、これまで不可能であったブラックホールを含むような強い重力場の直接観測が可能となり、こうした強い重力場を用いた重力理論の検証が喫緊の課題となった。こうした強い重力場をもつ天体周りの最内安定円軌道に対して、非動径方向の線形摂動を解析的に調べた(Ono, Suzuki, Asada, PRD94, 064042, 2016)。特に、今回開発した手法は、カーブラックホールに限らず、任意の定常かつ軸対称な時空に用いることができる点が最大の長所である。更に、自転しているブラックホール解のある模型では、 (動径方向の線形摂動に対する)最内安定円軌道が、天頂角方向の(赤道面軌道の場合、赤道面に垂直方向の)線形摂動に対して不安定であることを発見した。これは、従来の最内安定円軌道よりも外側で不安定になることを意味して、今後の重力波の波形予測にとって有益な示唆が得られた。 また、こうした強い重力場での因果構造を調べるうえで、光の曲がり角は最も基本的な量のひとつである。従来の計算法をこえる、漸近的に遠方の光源や観測者を仮定しない計算手法を開発した(Ishihara, Suzuki, Ono, Kitamura, Asada, PRD94, 084015, 2016; Ishihara, Suzuki, Ono, Asada, PRD95, 044017, 2017)。今回の定式化は、任意の静的かつ球対称な時空に適用出来る。つまり、ブラックホールに限らないため、ワームホールのような非自明なトポロージを持つ時空構造を理論的に研究するツールとしても、今後の応用が期待出来る。
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