昨年度までに本研究で開発した微視的粒子回転子模型を Sm アイソトープのハイパー核に適用し、ハイパー核の低励起集団運動に対する芯核の形状変化の効果を明らかにした。Sm アイソトープは、中性子数の増加とともに、球形から変形状態へ変化することが知られている。これにΛ粒子を付加させたのがSm アイソトープのハイパー核であるが、芯核が球形、変形のいずれの場合にもハイパー核の基底状態は単純な構造をしており、主に芯核の基底状態に s1/2 軌道のΛ粒子が結合している状態となっていることが分かった。また、負パリティ状態の場合、芯核が球形の場合は芯核の集団励起状態に p3/2 または p1/2 軌道のΛ粒子が単純に結合している状態になっているものが、芯核の変形が大きくなるとともにこれらの配位が強く混合していくことを明らかにした。この研究成果に関する投稿論文を現在準備中である。
また、微視的粒子回転子模型を 30Si 及び 31ΛSi 核に適用して、ハイパー核の変形に対する平均場の揺らぎの効果を議論した。平均場近似による先行研究において、オブレート形に変形した 30Si 核にΛ粒子を付加すると、変形が消失して球形のハイパー核となることが示唆されていた。しかしながら、微視的粒子回転子模型を用いて平均場近似を越える効果を取り入れると、核変形の消失は起こらず、31ΛSiハイパー核も変形をある程度保つことを明らかにした。この研究成果に関しても現在投稿論文を準備中である。
さらに、昨年度開発した半微視的結合チャンネル法を 16O+208Pb 系の核融合反応に適用し、平均場の揺らぎの効果に起因する 208Pb 核の八重極振動の非調和性を考慮すると、これまで再現が難しかった実験データをきれいに説明できることを指摘した。この成果をPhys. Rev. C 誌に発表した。
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