中性子捕獲QRPA理論の構築:連続状態QRPA理論を定式化し、さらに1keV~1MeVの低エネルギー中性子捕獲を記述できる数値計算コードを完成させた。r過程元素合成の理解に不可欠な、中性子過剰核における中性子捕獲断面積の記述を原子核密度汎関数理論に基いて記述することが初めて可能にするものである。 奇N核を対象としたHFB理論に基く中性子捕獲理論の研究:捕獲の初期状態である低エネルギー入射中性子に対する対相関効果について研究を進めた。研究前半ではp波散乱状態、特に低エネルギー準粒子共鳴に対する対相関効果を明らかにした。最終年度は、S波の連続状態準粒子軌道に焦点をあて、対相関効果を分析した。ドリップライン近傍核で対相関が働く場合、通常のS波ポテンシャル散乱ではみられない低エネルギーでの特異な断面積増加や共鳴的な振る舞いが現れる。一方、準粒子の散乱行列(S行列)極の複素運動量空間での振る舞いを分析することにより、通常のポテンシャル散乱でみられる束縛状態からバーチャル状態への移行する極に加えて、新たな2つの極が出現し、これが特異な対相関効果を説明できることを解明した。これは、低エネルギーS波中性子捕獲に対して大きな対相関効果を示唆するものであり、今後の研究発展にとって非常に意義深い。この成果は、現在執筆中の学術論文として公表予定である。 中性子過剰核の対相関・超流動と集団励起モードの研究:本研究の前半では、HFB理論を用いて、中性子過剰原子核に特有の対相関現象であるダイニュートロン相関の普遍性を遠方漸近性の観点から明らかにした。また、最終年度には、本研究で用いてきたHFB理論、開発した中性子捕獲QRPA理論、さらに大振幅4重極集団励起モードを記述する局所QRPA理論を、原子核密度汎関数理論とその時間依存理論の枠組みに整合的に組み込む理論整備を行い、レビュー論文を発表した。
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