本研究は、QCDのもつ対称性を手掛かりとして、ハドロンの多様な質量スペクトルを統一的に理解することを究極の目的とした一連の研究の一つである。本研究では具体的に、イータプライム中間子の質量に注目し、この中間子と原子核の束縛状態を生成し、ここから得られるピーク構造を観測/解析することで、イータプライムの有限密度中の性質の変化を調べたものである。そのため、南部-Jona-Lasinio模型やハドロン有効模型を用いて理論的に期待されるイータプライムの有限密度中の性質の変化を予言し、これを実験的に観測するために最適な実験条件/観測量について理論的に調べた。 本年度には、当該理論計算に基づいて遂行されたドイツ重イオン研究所におけるイータプライム原子核束縛状態生成実験の結果の解析を行い、当該実験論文がPhysical Review Letters に掲載・出版された。 また、ハドロンによる生成のみではなく、光生成についてもSPring-8などで実験を行っている実験グループと詳細な議論を行い、質量欠損法に加えて、原子核中においてイータプライムが崩壊するときに放出する粒子を観測することにより、得られると期待される生成断面積についても検討を行った。また、原子核標的に加え、核子標的におけるイータプライムの光生成についても検討を行い、中間子と核子の間の相互作用について、どのような情報が得られるかについても理論的に評価した。当該結果は、Physical Review Cに掲載された。
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