私は柳哲文助教(名大)・郡和範准教授(KEK)・中尾憲一教授(大阪市大)とともに、物質優勢期の原始ブラックホール形成について、その非等方性の効果と角運動量の効果を考慮して、生成率と生成されたブラックホールのスピン分布の導出をおこなった。具体的には、箍予想が与えるブラックホールの地平線形成条件と2次的に成長する角運動量を評価してKerr限界を適用した。その結果、特に密度ゆらぎが小さい場合には角運動量の効果によって生成が抑制されることおよび生成されるブラックホールは臨界付近まで高速に回転することを示した。 私はBernard J. Carr教授(ロンドン大)・伊形尚久博士(立教大)とともに、Einstein方程式のFLRW解について線形な状態方程式からなる物質場の場合の時空構造の完全分類を行った。特に、ダークエネルギーを記述する大きな負の圧力を持つ場合やエネルギー密度そのものが負の場合に、これまで知られていなかったFLRW解の共形的時空構造を明らかにした。この結果は、一般の状況における原始ブラックホール形成模型構築の際に非常に有用となるものである。 その他、小笠原康太氏(立教大院生)・宮本雲平准教授(秋県大)・伊形博士とともに超ペンローズ過程における超高エネルギー粒子の逃走確率を計算し、中尾教授・Pankaj S. Joshi教授(タタ基礎研究所)らと超高速回転体の安定性に関する考察を行った。國分隆文博士(KEK)・Sanjay Jhingan教授(山梨学院大)とともに、重力崩壊等によって時空の超高曲率が実現した場合の放射現象によって時空がどのように反作用を受けるかという問題に関するEinstein方程式の厳密解となる時空模型を提案した。
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