研究課題/領域番号 |
26400288
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
笠木 治郎太 東北大学, 電子光理学研究センター, 名誉教授 (10016181)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 核融合反応 / 超音波キャビテーション / 重陽子照射 / 液体リチウム / 遮蔽エネルギー |
研究実績の概要 |
液体金属へ超音波を作用するBLT超音波発生器及びホーンの形状改良が完了し、低エネルギー重陽子ビームの照射実験が開始された。実験では、60 keVの重陽子ビームを液体6Li標的に照射し、液体6Li中で生じるd(d,p)t反応からの陽子スペクトルを次のサイクルにて繰り返して測定した。①ビーム照射OFF(Beam-OFF)超音波OFF(US-OFF)、②Beam-ON US-OFF、③Beam-OFF US-ON、及び ④Beam-ON US-ON。スペクトルには、液体Li中に蓄積された重陽子とビーム重陽子とのd(d,p)t反応からの3-MeV陽子がクリアに観測された。以前報告したように、陽子収量のUS ON/OFF比が1.2以上になる場合が度々観測された。しかしながら、この増強は液体Liの表面のクリーンさに強く依存していることが明らかになった。これまでの種々の液体金属中でのdd反応の観測経験から、液体Li温度を高くすることにより、T=300度Cで長時間、液体Liをクリーンな状態に保つことに成功した。しかしながら、この状態では、約200度Cの液体Liで観測されたUS ON/OFFの変化は認められなくなった。一方、Beam-OFFでのスペクトルには、無視し得ないUS ON/OFFの効果が観測された。US-ON時の荷電粒子スペクトルからUS-OFF時のスペクトルを差し引くと、2.3MeV付近に幅の広いバンプが現れた。収量は0.012±0.0046個/秒である。現在のところ、このバンプ構造はBeam-OFFでのUS-ONの時の液体Liキャビテーションにより引き起こされるd(d,p)t反応からの陽子ではないかと推測している。しかしながら、より統計の高い測定とBeam-OFF時のバックグランドの減少をはかり、この観測結果を確かなものとする必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度に予定した実験準備が、装置の故障のため再製作を余儀なくされ、大幅に遅れた。実験が開始されたのが平成27年7月となり、実験条件の最適なパラメータ探索の段階にとどまっている。
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今後の研究の推進方策 |
重陽子ビームOFF時のd(d,p)t反応生起を確認するため、ビーム輸送系に静電デフレクターを設置し、ビームOFFに必要な時間をμ秒以下にする。その上で、超音波作用下の液体Li中のd(d,p)t反応のスペクトルの詳細測定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度の装置故障修理のため、研究実施が全体に遅れしまい、高速ビーム遮断装置の導入を次年度に行うことにしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
上述の高速ビーム遮断装置に関連での支出、及び、キャビテーションからの発光測定装置の充実に使用する。
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