研究課題/領域番号 |
26400289
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
成木 恵 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00415259)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ハドロン / 測定器開発 / ハドロン分光 |
研究実績の概要 |
本研究は、グザイ粒子の系統的な分光を世界で始めて行うために、K中間子ビーム同定用のリングイメージ型チェレンコフ検出器の開発を目的としている。 これまでに以下の3点について研究を進めることができた。 まず1点目は、現実的なK中間子ビーム光のプロファイル、および、パイ中間子の混入率の見積である。これにより、ビーム粒子を識別する検出器の設置箇所の決定し、その位置でのビームのプロファイルと分散の情報から検出器に要求される性能を決定することが出来た。 2点目は、輻射体の選定と制作計画の策定である。本研究では、グザイ粒子の系統的な生成をめざすが、物理的な議論を進め、最適な運動量は4GeV/cであると結論した。これにより、屈折率が1.05のエアロジェルを用いることを決定した。この制作に当たり、他大学等との研究協力を計画している。 3点目は、検出器全体の設計の完了である。設置箇所、輻射体の選定が決定し、全体的なサイズの制約、光学系の要請が明確になった。生成したチェレンコフリングを、鏡による1回反射で検出部まで導く設計とした。今後、実際に試作機を組み立てて性能を試験する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
測定器開発の試験を実施する予定である実験施設、J-PARCハドロン実験施設における放射能漏洩事故の影響により、テスト実験の実施計画の見直しを行っている。また、測定器の検出部に使用予定であるMPPCは、現在刻々と開発が行われており、時間とともに性能が向上した製品が発表されている段階である。従って、テスト実験時期を睨み、最適な時期を探っている段間である。
|
今後の研究の推進方策 |
まずはボトムラインとして、グザイ粒子生成のために最適な運動量領域での検出器の光学系、特に、チェレンコフリングの角度分解能を、試験器を作成して確認する。 この研究では、5GeV/c近辺で、粒子の質量によって発生するチェレンコフリングの径が異なることを利用して、粒子を識別することが求められる。グザイ粒子を生成するには強度の高いK中間子ビームが必要となる。このとき、K中間子に対して質量の近いパイ中間子の混入を防ぐため、適切な輻射体を選定し、発生したチェレンコフリングの径を精度良く測定する必要がある。 従って、次のように進める。まずは輻射体とチェレンコフリングの検出部の仕様を決定し、リング径の決定精度を検証する。その後、粒子強度の耐性について検証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
開発する検出器を用い性能試験を行う予定である当該施設、J-PARCハドロン実験施設において、放射性物質漏洩事故の影響があり、検出器テストのためのビームライン整備などが遅れている現状がある。これを受け、最終年度まで支出の主体を担う光測定器の仕様決定を最終年度までのばし、最新の高性能の測定器を購入することとした。
|
次年度使用額の使用計画 |
要求される仕様がほぼ決定したため、部品を購入して検出器の基本的な性能試験を行う予定である。
|