研究課題/領域番号 |
26400292
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
小汐 由介 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (80292960)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ニュートリノ / 原子核反応 / 中性カレント / 脱励起ガンマ線 / 超新星爆発 |
研究実績の概要 |
本年度は、まずこれまでのT2K実験のデータ解析を行った。特にニュートリノの酸素原子核との反応で発生する脱励起ガンマ線の予測分岐比を、Ankowski氏と協力して最新の理論モデルに置き換え、データ解析をやり直した。その結果、観測されたデータと予測値がより合うことが確認された。本研究成果をPRD誌に投稿し、掲載された。これは世界で初めてのニュートリノ酸素中性カレント反応による観測であり、非常に大きな意義を持つ。また国内外で開催された会議でも報告した。 平行して、大阪大学核物理研究センター(RCNP)での測定準備を開始した。ここでは上記反応の大きな系統誤差の原因となっている中性子の酸素原子核との二次反応を直接測定することを目的とした。RCNPには陽子ビームから中性子を発生させるビームラインがあり、本研究の目的に非常に適していることから、研究代表者はRCNPの研究者に連絡を取り、実験実現性を探ったところ、2015年1月にビームタイムをいただけることになり、実際の中性子ビームを使った実験を遂行することができた。この実験の結果、中性子ビーム起源のガンマ線雑音事象は無視できることが確認され、本実験に向けて重要なデータを取得することができた。さらに神戸大学や京都大学、カナダTriumf研究所の研究者からも共同実験を提案され、本実験に向けた体制も構築することができた。 同時に、近傍銀河で超新星爆発が起こった時に、本研究で探索しているニュートリノ反応での事象予測値のシミュレーションを行った。ここでもAnkowski氏と協力して最新の散乱断面積を導入し、スーパーカミオカンデでの検出予測値を求めたところ、全体の5%以上の割合を占めることがわかった。この反応による計算は本研究が初めてであり、物理学会で2度にわたり報告した。また現在は査読付論文への投稿に向けて準備を進めているところである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定では、26年度はT2K実験データの解析を進め、平行して大阪大学核物理研究センターで陽子ビームを用いた酸素原子核反応の実験の準備を進めることであった。しかし本年度は、早くもT2Kデータ解析による研究成果を査読付雑誌に論文を掲載することができた。本論文では、いまだ測定誤差は大きいが、我々が目的としている反応が実際に起こっていることを実証した。そのことは、当該ニュートリノ反応の測定誤差を大幅に低減することが可能となる本実験の重要性がますます増したことを意味する。またビーム実験については、準備のみならず試験データの取得まで行なうことができた。その結果からビーム起因の雑音事象は無視できることを実証したことから、27年度以降の本実験の実現性を高めることに成功した。さらに、中性カレント脱励起ガンマ線生成反応の理論的な研究も、Ankowski氏との共同研究により大幅に進展し、特に超新星爆発からのニュートリノ信号としては無視できない数が検出されることを示し、国内外での研究会で発表することができた。以上のことから(1)の評価を与えた。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究成果をもとに、今年度中にはRCNPでの中性子ビームを使った本実験を遂行したいと考えている。現在、そのための準備を進めているが、共同研究者が増えたことから、検出器の数を増やすなどして、当初よりも精度の高い実験結果が得られるよう研究計画を練っているところである。 実験結果が得られれば直ちにシミュレーションと比較することにより、T2K実験でのデータ解析へフィードバックさせ、系統誤差をより低減させる研究を進めていく。また本実験結果を用いることで、超新星爆発ニュートリノの検出予測の計算精度も上げていく。
|