国際リニアコライダーの陽電子源に関して,電子駆動方式の陽電子生成標的および,その下流の陽電子捕獲システムと加速装置における,熱負荷の詳細な検討を行った。特に,国際リニアコライダーの初期パラメータ変更の指針に伴う再検討を行った。その結果,従来の設計においては,標的40kW,陽電子捕獲システム30kW,加速装置117kWであった熱負荷を,それぞれ,16kW,13kW,32kWと大幅に軽減することが可能なことを見いだした。 これは電子駆動方式の陽電子源において最大の課題であった熱負荷の観点から,その実現性をほぼ確実にしたものである。 同方式における陽電子生成効率に関して,標的における陽電子生成,補角装置の効率,加速装置の構成と加速による負荷を考慮にいれた総合的なシミュレーションを行い,国際リニアコライダーの陽電子源として電子駆動方式が十分な性能をもっていることを示した。 陽電子生成標的に電子線を入射することにともなう,放射線量の見積を開始した。初期の計算において,アンジュレータ方式において過去に行われた計算と矛盾の無い結果を得ることができ,見積の方式が妥当であることを確認した。 これらと平行して,回転型の陽電子標的における,磁性流体を用いた真空保持試験装置を構築し,実際の運転で想定される回転速度における長期運転試験を行った。磁性流体における3ヶ月の長期運転において,大きな真空劣化は観測されないことを実証し,磁性流体による真空保持を採用した回転標的の製作にむけ重要且つ建設的なデータの取得に成功した。
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