研究課題/領域番号 |
26400298
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
小泉 光生 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究主幹 (30354814)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 核偏極 |
研究実績の概要 |
III-V族化合物半導体の価電帯にある電子をレーザーで伝導帯に励起すると、緩和の過程で、電子は原子核とスピンを交換する。低温環境下においては、核偏極による磁場が電子の緩和現象に強く影響を及ぼし、正のフィードバック効果により、強磁性体的な相転移が引き起こされ、原子核が自動的に大きく偏極する動的自己核偏極(DYNASP:Dynamic Nuclear Self Polarization)が起きると予測されている。本研究では、DYNASP現象を実験的に証明することを目的としている。 実験では、InP試料を2K近にする必要があるため、クライオスタットを導入し、液体ヘリウムモニター、熱リークを少なくする改良、S/N向上のためのシールド強化などの装置整備を進めてきた。その結果、InPを一日を超える時間の間、極低温に保ったまま、パルスNMRによる偏極測定が出来るようになった。そうした上で、温度、ヘリウムなどの実験パラメーターの自動計測を行いつつ、NMR信号を取得し、物性としての基礎パラメータの一つである緩和時間測定を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
レーザービームは、クライオスタットの窓を通って、液体ヘリウム中で冷却された試料に到達する。実験を行ったところ、液体ヘリウム槽に取り付けたガラス窓が窒素で凍り付いたため、レーザーが試料に到達出来ない状況となることが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、装置の整備開発を行いつつ研究を進める。 まず、追加でガラス窓を取り付け、窒素ガスが液体ヘリウム槽の窓に直接流れ込まないように改良する。レーザーが試料に照射できる状況を確認した上で、核偏極度を測定しつつ、レーザーを導入し、DYNASP現象が起きていることを調べる。 DYNASP現象の確認が終わった時点で、レーザーパワー、結晶温度、レーザー偏光度、半導体中のドーパントの影響などを調べ、DYNASP理論との比較を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年4月、所属機関の一部と放医研の統合による量研機構の発足に伴い、組織改正が進められた結果、量研機構へ移った部署の一部業務を引き継ぐことになった。これにより、プロジェクト研究の枠組み更新や、研究実施の手続き変更、共同研究に関する調整、予算執行及び物品管理等の業務量が急激に増加した。このことによって、当初計画の予想に反し、研究課題への従事時間を十分に確保することが出来なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は、昨年度予定していた実験を行う。予算は主に液体ヘリウム等の寒剤購入や、試料などの消耗品に使用する。
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