研究課題/領域番号 |
26400299
|
研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
百合 庸介 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 高崎量子応用研究所 放射線高度利用施設部, 副主任研究員 (90414565)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ビーム冷却 / イオンビーム / レーザー冷却 / 秩序化 / クリスタルビーム |
研究実績の概要 |
蓄積リングにおいて強く冷却されたイオンビームが呈する秩序化状態の特性を明らかにするため、理論的及び実験的研究を行った。 理論的研究では、京都大学の蓄積リング"S-LSR"の電磁石配置を想定して、系統的な分子動力学シミュレーションを実施した。リングの運転条件やビーム線密度等の様々な条件において、40keVの24Mg+ビームをテーパー冷却と共鳴結合を組み合わせた3次元レーザー冷却法によって冷却し、冷却後ビームの状態やその特性を詳しく調べた。その結果、これまでに知られていた1次元の紐状クリスタルビームが形成される線密度よりも数倍高い線密度において、レーザーの照射位置や周波数等の冷却パラメータによって、イオンの配置が3次元的に整列する秩序化構造が形成されるのを見出した。このとき、個々のイオンがビームの進行方向に垂直な断面において規則的に回転することや、その回転数が空間電荷効果によって抑制されたベータトロン振動数に一致するとともにリングの運転条件に依存すること等を明らかにした。また、電磁石による集束・発散に伴う、秩序化したビームの横方向半径の変動がエンベロープ方程式の解とよく一致することを確かめた。 実験的研究では、秩序化あるいは結晶化した微細なビームの断面構造を計測する手法の可能性を探るため、その予備実験としてラジオクロミックフィルムへのイオン照射を原子力機構高崎研のイオン照射研究施設TIARAにおいて行った。keV~MeV級エネルギーの12Cビームをラジオクロミックフィルムに均一に照射し、その着色応答特性を調べた。照射したフィルムは、汎用スキャナで読み取り、着色の度合いを吸光度の変化として定量化し、解析した。吸光度変化のビームエネルギー及びフルエンスに対する依存性を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論的研究では、シミュレーションにより秩序化ビームの特性を明らかにするとともにビーム軌道理論との比較を行い、成果として発表した。実験では、ラジオクロミックフィルムのイオン照射応答特性を明らかにした。これらは実施計画におおむね沿ったものであり、ほぼ順調に進められたと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
シミュレーションでは、ビームの秩序化状態の特性をさらに詳細に調べるとともに、秩序化状態から結晶化状態への遷移の可能性を探る。実験では、結晶化あるいは秩序化したビームの構造を測定するための模擬実験として、ラジオクロミックフィルムへのマイクロビーム照射を実施する計画である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
必要な性能を有するワークステーションが当初想定していたよりも安価に購入できたため。また、計画していた成果発表のための出張を都合により取り止めたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
データの処理、解析、保存のためのコンピュータ及び周辺機器を整備し、消耗品を購入するとともに、これまでに得られた研究成果を国内外の学会等において発表するための旅費や参加費に充てる計画である。
|