研究課題
本年度は、冷却イオンビームの秩序化状態に関する分子動力学シミュレーションおよび秩序化ビームの計測手法に関するイオン照射実験を実施した。シミュレーション研究では、レーザー冷却によって形成された3次元的に秩序化したビームの特性を調べた。秩序化ビームを構成する個々のイオンが示すビーム軸周りの規則的な回転運動のために、水平(鉛直)方向位置と鉛直(水平)方向角度で張られるx-y'(y-x')位相空間でビームを見ると、イオンは常にほぼ直線状に分布し、この位相空間でのエミッタンスは通常のx-x'(y-y')位相空間のエミッタンスに比べて、数分の一程度に小さくなることが分かった。理想的には、秩序化ビームのエミッタンスはx-y'、y-x'位相空間においてゼロになると期待される。また、ビーム冷却力の制御によって秩序化状態の回転運動を抑制し、x-x'(y-y')エミッタンスがゼロである結晶化ビームを形成することを試みた。その結果、構造がわずかに変化する場合が見られたものの、多くの場合、冷却力の変化に伴って規則的な粒子運動や構造は消失しエミッタンスは増大した。秩序化状態は擾乱に敏感であり、冷却力の制御による回転運動の抑制は困難であると考えられる。ビーム計測手法については、秩序化したビームの断面構造を、ラジオクロミックフィルムを用いて実測する可能性を明らかにするため、量研機構高崎研の軽イオンマイクロビーム照射装置を利用してフィルムの空間分解能を調べた。直径1μmに集束された3MeV陽子マイクロビームを走査することにより、フィルムに間隔の異なる直線や同心円等のパターンを描画し、生じた着色痕を光学顕微鏡で観察した。解析の結果、フィルムは数μmの空間分解能を有することが分かった。したがって、ラジオクロミックフィルムは、直径数100μm程度で数10μmの間隙を有する秩序化あるいは結晶化ビームの断面構造の測定に十分利用可能であると考えられる。
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Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A: Accelerators, Spectrometers, Detectors and Associated Equipment
巻: 828 ページ: 15, 21
http://dx.doi.org/10.1016/j.nima.2016.04.055